遺言で全財産を一人に相続させる場合、他の相続人の権利はどうなる?遺留分と異議の可否を徹底解説

家族構成がシンプルであっても、遺産相続にまつわるトラブルは意外と起こりやすいものです。たとえば、ある子どもに全財産を相続させるという遺言書があった場合、他の子どもは一切遺産を受け取れないのでしょうか?本記事では「遺留分」制度や遺言の法的効力について、司法書士や弁護士監修の情報に基づき詳しく解説していきます。

遺言書がある場合の相続の基本

遺言書が有効に作成されている場合、原則として遺言の内容が優先されます。たとえば、被相続人(父)が「子どもAに全財産を相続させる」と記載した自筆証書遺言や公正証書遺言がある場合、基本的にはその内容に従って遺産分割が行われます。

とくに公正証書遺言は、信頼性が高く、家庭裁判所での検認も不要なため、法的効力が強い形式といえます。

遺留分とは?遺言があっても主張できる相続権

しかし、遺言書があるからといって、他の法定相続人が完全に遺産を受け取れなくなるわけではありません。民法で認められた「遺留分」という制度により、最低限の取り分を請求する権利があります。

例えば、法定相続人が子どもAと子どもBの2人だけの場合、Bは全体の1/4(法定相続分の1/2×遺留分率1/2)を遺留分として請求することができます。

遺留分侵害額請求の方法と期限

遺留分を侵害された相続人は、被相続人が亡くなったことと遺留分を侵害する遺贈・贈与があったことを知った日から1年以内に「遺留分侵害額請求」を行う必要があります。

請求は内容証明郵便などで法的効力を持たせることが推奨されます。交渉で解決しない場合は家庭裁判所に調停を申し立てることも可能です。

事例で学ぶ:遺言と遺留分のバランス

たとえば、父が1,000万円の財産を持ち、遺言書でAに全額を相続させるとした場合でも、Bは遺留分として250万円を請求できます。この金額は金銭請求で支払われることが一般的で、現物(不動産など)を分割する必要はありません。

このように、遺言で一方に全ての財産を与えても、他の相続人が遺留分を主張することで調整が行われます。

遺留分を放棄させることはできるのか

相続人に事前に遺留分を放棄させたい場合、家庭裁判所の許可を得て「遺留分の放棄」の手続きを行うことが可能です。ただし、これは生前に限っての手続きであり、被相続人の死亡後には原則認められません。

一方で、相続開始後に「遺留分を請求しない」との合意を当事者間ですることも可能ですが、その際は十分な説明と書面での取り交わしが重要です。

まとめ:遺言書があっても遺留分への配慮が必要

遺言書により一人に全財産を相続させることは可能ですが、他の法定相続人が遺留分を主張すれば、財産の一部を金銭で支払う義務が生じる場合があります。遺産トラブルを避けるためにも、遺留分に配慮した遺言の作成や、生前の家族間での話し合いが重要です。

相続でのトラブルを避けるには、司法書士や弁護士など専門家のアドバイスを早めに受けることが、最善の対策となるでしょう。

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