遺言書で銀行口座を解約できるかは『文言』が決め手?遺言執行者の権限と金融機関の対応差とは

遺言書を持参して銀行で口座の解約・払い戻しをしようとした際、金融機関によって対応が異なるケースがあります。特に注目されるのが、遺言書に記載されている『遺言執行者の権限』の文言です。この記事では、その違いが生じる理由と実務上の注意点を解説します。

遺言執行者の法的な役割とは?

遺言執行者は、民法に基づいて遺言の内容を実現するための権限を持つ者です。民法第1012条により、遺言執行者は相続財産の管理・引渡しなどの義務と権限を持ちますが、すべての金融機関がこれに一律に対応するわけではありません。

特に「口座の解約・払い戻し」という金融取引においては、より明確な委任内容が求められる場合があり、それが金融機関独自の運用に影響します。

「解約・払い戻しの権限を与える」文言が必要な理由

ある銀行では、遺言執行者に関して「銀行口座の解約や払い戻しを行う権限を与える」という具体的な文言がない限り、本人の行為を認めないとするケースがあります。これは、金融機関が責任回避やトラブル防止のために厳格な解釈をすることが背景にあります。

一方、別の銀行では民法上の規定に従い、「遺言執行者の資格がある」と判断すれば、個別の文言がなくても手続きを進める場合があります。

実際に起こった事例から読み解く

例えば、3行のうち2行は検認済みの遺言書と遺言執行者の本人確認書類があれば手続きを認めましたが、残る1行では「文言不足」を理由に対応を拒否されたという事例があります。

このように、同じ遺言書であっても金融機関の内部規定によって扱いが分かれるのが現実です。

解決策:遺言書に明記しておくべき文言とは?

将来的なトラブル回避のためには、遺言書に以下のような文言を明記することが推奨されます。

  • 「遺言執行者に、遺言に基づいて被相続人名義の金融機関口座の解約・払い戻し・資産移転を行う権限を付与する。」
  • 「本遺言に基づき、金融機関への必要な手続きをすべて執行者に一任する。」

これらを記載しておくことで、多くの金融機関でスムーズな手続きが可能になります。

それでも対応が分かれる理由は?

金融機関には独自のマニュアルやリスク回避策があり、裁判所の検認があっても自社基準に満たない書類や内容の場合は慎重になる傾向があります。

また、過去のトラブル事例から、より明示的な権限確認を求める方向に変化している銀行も少なくありません。

まとめ:金融機関対応を見越した遺言書の作成が大切

遺言執行者の権限について明文化していない遺言書では、金融機関によっては対応を拒否される可能性があります。法的には執行者に一定の権限があるものの、実務では金融機関の判断が重視されるため、トラブル防止には明確な記載が重要です。

遺言書の作成段階から司法書士や弁護士など専門家に相談し、実務に即した内容にすることで、遺族や執行者の手間を減らすことができます。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール