消費貸借契約は、お金やモノを貸し借りする法律行為のひとつで、日常生活やビジネスの中でもよく登場します。その中でも「期限のない消費貸借契約」と言われる場合、何の期限が「ない」のか、という点に疑問を持つ方も多いかもしれません。この記事では、民法に基づきその意味や具体的な取扱い、返済のタイミングなどを解説していきます。
「期限のない消費貸借」とはどういう意味?
ここでいう「期限」とは、借主(債務者)がいつまでにお金を返さなければならないかという、弁済期=返済期限を指しています。つまり、「期限のない消費貸借」とは、「返済期日をあらかじめ取り決めていない貸し借り契約」のことです。
例えば、友人に「いつでもいいから返して」と言って1万円を貸した場合、これは弁済期を定めていない消費貸借契約になります。このような契約は、契約そのものは成立していても、返済期が明確に定まっていないのが特徴です。
契約はいつ成立する?弁済期との違いに注意
「期限がない」と聞くと、契約自体が不確かなもののように感じるかもしれませんが、消費貸借契約は、モノやお金の受渡しによって成立します(民法587条)。つまり、実際に金銭などが渡されていれば、契約はすでに成立していることになります。
弁済期(返済期限)が定まっているか否かは、契約の成立とは別の話です。返済期が決まっていなくても、契約自体が無効になることはありません。
返済の請求はいつできるの?
弁済期が定められていない場合、貸主(債権者)は、いつでも返済を請求することができます(民法591条)。ただし、請求された借主(債務者)は、相当な期間内に返済すれば良いとされています。
この「相当な期間」とは明確に定義されているわけではなく、金額や事情、社会通念に応じて判断されます。たとえば、10万円を借りていて請求された場合、1週間〜1ヶ月以内が妥当と見なされるケースが多いです。
弁済期を設定しなかった場合のリスク
貸主側としては、弁済期を設定しなかったことで、思い通りのタイミングで返してもらえないリスクが生じます。また、借主が返済を引き延ばそうとする場合でも、請求から実際の返済まで一定の猶予を見なければならないのも注意点です。
そのため、ビジネスや高額の貸し借りでは、契約書や借用書で返済期限を明記することがトラブル回避につながります。
トラブルになった場合の対処法
期限の定めがない場合でも、証拠(LINEのやりとりや借用メモなど)があれば契約成立を証明できます。返済請求を行ったにもかかわらず応じない場合、最終的には民事調停や少額訴訟で対応することも可能です。
その際、請求日とその後の猶予期間が重要なポイントとなるため、請求した証拠(内容証明郵便など)を残すことも有効です。
まとめ:期限のない貸し借りも立派な契約
「期限のない消費貸借契約」とは、あくまで「返済期限を決めていない」だけであり、契約そのものはお金の受渡しによって成立しています。返済は請求があれば相当期間内に行う必要があります。
もし貸し借りをする予定がある場合は、弁済期や返済方法を事前に取り決め、書面などで残しておくと安心です。トラブルの回避とスムーズな解決のためにも、最低限の法的知識は備えておきましょう。