近年、グローバルビジネスや国際的な取引の増加に伴い、日本国内に住む個人や法人が海外の企業や個人から訴えられるケースも増えています。特にアメリカからの訴訟では高額な損害賠償請求に発展することもあります。この記事では、海外からの判決が日本で強制執行される場合に、給料などの財産がどこまで差し押さえられるかについて詳しく解説します。
海外判決の日本国内での強制執行は可能?
結論から言えば、海外で出された確定判決は、日本の民事執行法上の「外国判決の承認」に基づいて、日本での強制執行が可能です。つまり、アメリカでの裁判で敗訴しても、日本でその判決が「執行判決(民事訴訟法第118条)」として認められれば、債務者の財産は日本国内で差し押さえ対象になります。
ただし、承認されるには、①判決が確定している、②公序良俗に反しない、③日本と相互保証があるなどの条件を満たす必要があります。
差し押さえ可能な財産と範囲
強制執行が可能になったとしても、差し押さえには日本の法律が適用されます。つまり、差し押さえ範囲は日本の「民事執行法」第152条等に準拠する形になります。
- 給与:給料の4分の1まで。ただし、差し押さえ後の残額が33万円を超える場合、その超過分は差し押さえ可能。
- 預貯金:上限なし。ただし生活保護受給口座などは不可。
- 不動産・動産:評価額に応じて売却・配当の対象。
つまり、アメリカなど海外の判決でも、日本国内での執行に関しては「日本の差し押さえ制限」が適用されるのです。
実例で見る強制執行の流れ
例えば、アメリカの企業が日本の個人に対し、1,000万円の損害賠償で勝訴した場合。
- 東京地方裁判所に執行判決の申し立て
- 承認されれば、給与や口座など差し押さえの手続き
- 給与なら1ヶ月に25万円の給料の場合、差し押さえは最大6万2,500円
ただし、申立費用や翻訳文書の整備、現地弁護士費用なども加味されるため、実際の執行には時間とコストがかかる点に注意が必要です。
海外からの訴訟リスクに備えるには
・契約書に「準拠法と裁判管轄は日本とする」と記載することが重要です。
・国際訴訟対応に詳しい弁護士や司法書士に相談し、事前リスクを分析しましょう。
・また、企業であれば海外PL保険や国際賠償責任保険の導入も検討価値があります。
まとめ:海外判決でも差し押さえは日本法に準拠
たとえアメリカなど海外での訴訟に敗訴したとしても、日本でその判決に基づいて強制執行をする際には、「日本の民事執行法」に則った差し押さえルールが適用されることになります。
- 給与は原則4分の1まで(生活保障考慮)
- 預金や不動産の差し押さえも日本基準で
- 海外訴訟対策には契約書や弁護士選定が鍵
国際訴訟のリスクはゼロではありませんが、制度や仕組みを正しく理解すれば、適切な対応が可能です。