テレビや映画などで見かけることのある「うそ発見器」ことポリグラフ検査。心理的な反応を計測し、発言の真偽を測るこの方法は、果たして実際の裁判でも証拠として通用するのでしょうか?この記事では、ポリグラフ検査の仕組みと、日本および海外での法的な扱いについて詳しく解説します。
ポリグラフ検査とは?
ポリグラフ検査とは、被検査者の心拍数・血圧・呼吸・発汗量などを測定し、心理的なストレス反応を分析することで、発言が真実かどうかを判断しようとする方法です。
日本では主に警察が取り調べの補助として使用することがありますが、医学的・科学的な根拠が完全に確立されているとは言い切れません。
日本の裁判におけるポリグラフの位置づけ
結論から言えば、ポリグラフ検査の結果は、日本の裁判で正式な証拠としては認められにくいです。刑事訴訟法上、証拠能力があるかどうかは「信用性」や「適法性」が問われますが、ポリグラフは科学的な信頼性に疑問が残るという理由から、証拠価値が低く評価されがちです。
過去の裁判例においても、ポリグラフ結果を「参考資料」として考慮したことはあっても、有罪・無罪の決定的な判断材料として採用された例はほぼありません。
被疑者の同意と検査の利用
ポリグラフ検査は被疑者の同意がなければ実施できません。また、検査においては事前に十分な説明と同意書の取り交わしが必要であり、任意性が確保されなければ、その結果が仮に裁判で持ち出されたとしても無効とされる可能性が高くなります。
つまり、強制的にポリグラフを受けさせられることはなく、検査の任意性と正確性は、裁判での扱いを左右する重要な要素です。
海外での扱い:アメリカの場合
一方、アメリカでは州によってポリグラフ検査の証拠能力の取り扱いが異なります。たとえばカリフォルニア州やニューヨーク州などでは、ポリグラフの結果は基本的に裁判で認められていませんが、オクラホマ州など一部の州では、当事者が合意していれば証拠として提出可能とされています。
このように、国や地域によってポリグラフの証拠性は大きく異なり、国際的にもその信頼性には疑問が残っています。
実際の裁判例:ポリグラフと判決の関係
例えば、2000年代初頭にあったある性犯罪の裁判では、被疑者がポリグラフで「無実」を示したものの、検察側はその結果を証拠として採用せず、有罪判決が下されました。
このような例からも分かるように、ポリグラフはあくまでも捜査補助的な位置づけにとどまっており、裁判所がそれを判断材料の中核に据えることは稀です。
まとめ:ポリグラフは決め手にはなりにくい
ポリグラフ検査は、被疑者の供述の信憑性を探る補助的手段として一定の価値はあるものの、裁判で決定的な証拠にはなりにくいというのが実情です。
日本の法制度においては、科学的根拠に基づく証拠の重視がなされており、ポリグラフのような心理的・生理的反応に依存した検査は、証拠能力の評価が低くなります。
したがって、裁判で真実を明らかにするためには、ポリグラフ以外の物証や証言、監視カメラ映像などの明確な証拠がより重視されます。