自転車と歩行者の接触事故で治療費を支払う場合、領収書や明細書を受け取る権利はあるのか?

自転車と歩行者の接触事故など、加害者側が治療費を負担する際には、支払った金額の証明として領収書や診療明細書を受け取りたい場面が多くあります。ところが、医療機関によってはそれを交付しない、あるいはコピーや写真撮影も断られるといったケースが実際に存在します。この記事では、加害者が支払いに際して医療機関から必要な書類を受け取る権利があるのかどうか、法的根拠や対応策を解説します。

医療機関が書類の交付を拒否する理由とは

診療明細書や領収書は、原則として患者本人に交付されることを想定しているため、第三者に渡すことに慎重になる医療機関もあります。特に個人情報保護の観点から、加害者や代理人が来院した場合、患者本人の承諾がない限り交付を拒否されるケースが少なくありません。

しかし、治療費を「現実に支払う立場」にある加害者が、支払証明として領収書を求めるのは合理的な要請であり、支払い時に交付を拒まれることは本来想定されていない状況です。

加害者が領収書を受け取る法的権利と実務的な根拠

民法第486条では、「債務の弁済者は、弁済と引き換えに領収書の交付を請求することができる」と定められており、加害者が治療費を負担した場合には領収書を受け取る法的権利があります。これは医療に限らず、一般の債務弁済でも同様に適用されます。

ただし、診療明細書は医療行為の内訳を含むため、個人情報や病状などのセンシティブな情報を含む点で慎重に扱われています。このため、明細書の交付は患者本人の同意書や委任状の提出が必要となる場合が多くあります。

スムーズに領収書・明細書を受け取るための手順

  • 支払い前に患者本人(被害者)に領収書・明細書の交付について了承を得ておく
  • 医療機関には支払いと引き換えに領収書を請求する法的根拠があることを丁寧に伝える
  • 必要に応じて委任状や同意書を持参し、書面で要請する

事前に電話で確認するだけでなく、書面で明確に依頼し、医療機関のルールに合わせた準備をしておくことで、トラブルを避けやすくなります。

領収書がもらえなかった場合の代替手段

どうしても領収書がもらえない場合、支払いを銀行振込にし、振込明細書を証拠として保管する方法もあります。さらに、やり取りの記録を残しておくことも重要です。

また、個人情報保護法に抵触しない範囲で、第三者への情報開示について医療機関と調整を行うために、弁護士や損害保険会社の担当者を通じて交渉することも選択肢です。

まとめ:支払い者にも最低限の書類を受け取る正当な理由がある

交通事故や接触事故の加害者として治療費を支払う場合、領収書の交付は民法上の正当な権利です。ただし、診療明細書については患者本人の同意が必要となるため、事前の調整が不可欠です。

医療機関の事情や法律的な制限を理解したうえで、誠実な対応を心がけることが、スムーズなトラブル解決につながります。

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