インターネット上の誹謗中傷や名誉毀損に対して権利侵害の被害回復を図る手段として「開示請求」があります。投稿されたコンテンツに関しては日時やIPアドレスが明確に記録されていることが多いですが、プロフィール情報(ユーザー名、アイコン画像など)については記録の性質が異なるため、注意が必要です。
開示請求の基本とログ保存の仕組み
プロバイダ責任制限法に基づく開示請求では、まず投稿の「発信者情報開示請求」が行われます。この際に重要なのが投稿に紐づいた「タイムスタンプ(投稿日時)」と「IPアドレス」の一致です。
一方、プロフィール情報は投稿のように時系列で管理される性質ではないため、プロバイダが保持するログも限定的です。特に、いつどのIPからどのプロフィールが更新されたかという記録は取得できないことが多く、証拠としての活用には難しさがあります。
プロフィール画像や名前での開示請求は可能か?
プロフィール画像や表示名によって権利が侵害された場合、理論上はそれ単体でも開示請求は可能ですが、現実的には厳しいです。なぜなら、これらには投稿のような明確な「発信時点」が存在しないからです。
このような場合には、最終投稿時の情報を手がかりにする方法が有効です。すなわち、プロフィールが当該権利侵害の状態で最後に投稿された時刻を特定し、それをもとに開示請求するという手法です。
開示請求に必要な情報と準備すべき資料
実務的には次のような情報を用意することで、開示請求の成功率を高めることができます。
- 対象アカウントのプロフィール画像や表示名のスクリーンショット(保存日明記)
- その状態で行われた投稿(発信内容)とその日時
- 被害内容とその影響を証明する資料(例:業務への支障、精神的損害など)
また、アカウントIDやユーザーURLなど、技術的に個別特定できる情報も可能な限り取得しておきましょう。
ログ保存期間に関する注意点
一般的にプロバイダやSNS事業者が保存するIPアドレス等の通信記録は3か月〜6か月程度です。これを過ぎるとデータが自動的に削除されてしまうため、迅速な対応が不可欠です。
たとえば投稿から4か月以上経ってしまった場合、投稿は見えていても開示請求に必要なログがすでに消失している可能性があります。したがって、権利侵害を確認した時点で速やかに記録保存と弁護士相談を行うことが推奨されます。
実務で採られる開示請求の戦略例
実際の弁護士実務では以下のような工夫を凝らすことで、情報開示を実現するケースもあります。
- プロフィールと投稿内容の同一性を指摘し、投稿のログに基づく請求と併用
- 更新履歴が残るプラットフォームであれば、更新時点を調査して申立て
- 複数回の投稿を時系列に整理し、ログの保存が確認できる直近の投稿を指定
これらの方法は、弁護士による専門的な戦略立案が必要不可欠です。
まとめ:開示請求成功の鍵は「証拠の工夫とスピード」
プロフィール情報による権利侵害に対しては、投稿のように明確なログが存在しないため、個別の投稿や関連する証拠との組み合わせが必要です。
投稿の最終時刻や更新状態のスクリーンショットなどを駆使して、早期に法的措置を講じることが成功への近道となります。
もし迷った場合は、弁護士ドットコムなどの法律相談サイトで無料相談を活用するのもおすすめです。