カルテ改ざんが裁判で発覚した場合に問われる法的責任とその影響とは?

医療の現場で患者の診療内容を記録するカルテは、法的にも非常に重要な証拠資料です。そのカルテを故意に改ざんした場合、後の裁判で不利な結果を招くばかりか、刑事責任にも問われる可能性があります。本記事では、カルテ改ざんが裁判で問題となった際にどのようなリスクがあるのかを詳しく解説します。

カルテは法的な証拠資料としての役割を持つ

医師法や医療法に基づき、診療録(カルテ)は患者の病状や治療内容を記録する医師の義務として保管されます。裁判においては、カルテの内容が患者と医療機関の間の重要な証拠となるため、正確性と信頼性が求められます。

特に医療過誤訴訟では、カルテの記載時刻や記録内容が争点になることがあり、後から改ざんされたと判明すれば、裁判所の心証を著しく悪化させます。

カルテ改ざんが発覚した場合に考えられる影響

カルテ改ざんが裁判で明るみに出た場合、病院側に対して極めて不利な判断が下される傾向があります。裁判所は、改ざんを「証拠隠滅」と捉え、過失があった場合にはその過失が重大であると判断する可能性が高まります。

また、原告(患者側)が損害賠償請求をしている場合、カルテ改ざん自体が故意による加重要因とみなされ、慰謝料が高額になるケースもあります。

刑事責任の可能性:文書偽造罪や証拠隠滅罪

カルテの改ざんが悪質であった場合、民事訴訟だけでなく刑事告発されることもあります。私文書偽造罪(刑法第159条)や証拠隠滅罪(刑法第104条)に該当する可能性があり、有罪となれば懲役刑や罰金が科されることもあります。

例えば、医師が診療記録に後から虚偽の記載を加えた場合、それが患者の不利益になる意図であれば、意図的な虚偽記載として処罰対象になるおそれがあります。

医療機関への行政処分・社会的信用失墜

カルテ改ざんが公になった場合、医療機関には厚生労働省や都道府県から行政指導や診療報酬の返還命令、さらには保険医療機関の指定取り消し処分などの行政処分が下されることがあります。

加えて、社会的信用を失うことから、患者数の激減やスタッフの退職など経営への打撃が避けられません。

実際の判例から見るカルテ改ざんの影響

過去の判例では、ある総合病院が医療過誤を隠すためにカルテの一部を改ざんしていた事実が発覚し、裁判では加重過失として損害賠償額が倍増、さらに担当医師が証拠隠滅罪で略式起訴された例があります。

このように、カルテ改ざんが裁判で明らかになった場合には、単に訴訟に負けるだけでなく、刑事・行政・社会的な広範囲にわたるダメージが発生します。

まとめ:カルテ改ざんは極めて重いリスクを伴う

カルテ改ざんが裁判で発覚した場合、民事賠償の増額、刑事責任、行政処分、信用失墜という多重リスクに直面します。医療機関や医師にとって、カルテは単なる業務記録ではなく、法的にも極めて重要な資料です。

問題が発生した場合でも、改ざんという行為ではなく、正しい記録と誠実な対応が長期的に見て最も信頼を守る道であることを認識しておくべきです。

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