追突事故で過失割合が10対0となると、過失のない被害者側には十分な補償がされるべきですが、その中でも見落とされがちなのが「評価損(格落ち損)」です。特に新車購入後間もない車が事故によって大きな修理を受けた場合、市場での価値が著しく下がってしまうことがあり、この損失は請求可能なケースが多数あります。
評価損(格落ち損)とは何か
評価損とは、車が事故によって修理されたことで、たとえ見た目が元に戻っても「事故車」として中古車市場で価値が下がることによって生じる損失を指します。これは物理的損傷とは別の損害であり、中古車査定時に「修復歴あり」とされることで生まれる差額分の損失を補填する考え方です。
評価損は、車両価値が高く、かつ修理箇所が骨格部分や広範囲に及ぶときに認められやすい傾向があります。
10対0の追突事故でも評価損は請求可能
加害者側の過失が100%(10:0)の事故では、被害者に一切の責任がありません。このようなケースでは、加害者側の保険会社に対して修理費用とは別に評価損の請求も可能です。ただし、保険会社によっては「認めない」姿勢をとることもあるため、法的な根拠をもとに主張していくことが重要です。
弁護士に依頼している場合は、交渉のプロによって請求の可能性が高まります。実際に裁判所でも評価損が認められた判例は数多くあります。
評価損が認められる条件とは?
評価損が認められるかどうかの判断には以下のような要素が関係します。
- 新車に近い状態(一般的には購入から1~2年以内)
- 修理箇所が多い、または骨格部分を含む大規模修理
- 高額な車両(車両価格が300万円以上など)
- 走行距離が少ない(例:1万km未満)
質問にあるケースでは、購入から7ヶ月、5000km走行、新車価格350万円、修理内容がバックフロアやサイドメンバーを含む大規模であることから、評価損が認められる可能性は非常に高いと考えられます。
評価損の金額はどれくらい?
評価損の計算方法は一律ではなく、以下のような方式が用いられることが一般的です。
- 車両価値の5~15%を目安に算出
- 修理金額の20~30%を目安に算出
たとえば、車両価値が350万円であれば、350万 × 10% = 約35万円程度が妥当な評価損とされる場合もあります。また、修理見積が80万円であれば、80万 × 25% = 約20万円と計算されるケースもあります。
実際の評価損の額は、交渉状況や地域、保険会社の対応、裁判所の判断などで異なります。
評価損を請求するために必要な証拠と準備
評価損を主張するためには、以下のような資料を準備すると有利です。
- 修理見積書(修理内容の詳細が記載されたもの)
- 車両購入時の契約書(車両価格やオプションが確認できる)
- 走行距離が分かる車検証または整備記録
- 修復歴による査定額の減額事例(中古車業者の査定表など)
これらの資料を揃えたうえで、弁護士を通じて主張すれば、評価損が認められる可能性は高くなります。
まとめ:評価損は立派な損害。泣き寝入りせずしっかり請求を
10対0の追突事故であっても、評価損は正当な損害のひとつです。特に新車同然の高額な車両に大規模な修理が加えられた場合、市場価値が落ちるのは明らかです。
保険会社の対応が渋い場合もありますが、証拠をそろえて法的な根拠をもとに請求すれば、補償が認められる可能性は十分あります。ぜひ弁護士と連携しながら、泣き寝入りせずに正当な損害回復を目指しましょう。