車の運転中に「何かに当たったのでは」と過剰に不安になり、ドライブレコーダーを何度も確認してしまう――こうした経験は、誰にでも起こりうるものですが、それが日常生活に支障をきたすようであれば注意が必要です。この記事では、運転時に感じる加害恐怖の心理的背景と、強迫性障害（OCD）の可能性について、具体例を交えて解説します。
加害恐怖とは何か？
加害恐怖とは、「自分が他人に危害を加えてしまったのではないか」という過剰な不安や恐れのことを指します。特に運転中は、ちょっとした振動や音に対して「人をひいてしまったのでは」と思い込み、後から何度も確認行動を繰り返してしまうことがあります。
こうした症状は精神的なストレスや責任感の強さからくるケースが多く、まじめな性格の人に多く見られます。
過去の出来事が不安の引き金になることも
例えば、かつて横断歩道で歩行者に気づかず、急ブレーキで接触を回避した経験があると、その記憶が強く残り「またやってしまったのでは」と思い込むようになります。これは一種のトラウマ反応とも言えるでしょう。
問題なのは、その後の「確認行動」が癖になってしまい、何度もドラレコを見返したり、ルートを戻って確認したりすることで、日常生活や精神状態に支障をきたしてしまう点です。
強迫性障害の可能性とその特徴
強迫性障害（OCD）とは、不合理と分かっていても「確認せずにはいられない」という強迫観念と、それに対する強迫行為（確認や回避など）が続いてしまう状態を指します。運転に関する加害恐怖も、強迫性障害の一種として知られています。
特徴的なのは、「もし人をひいていたら…」という思考が頭から離れず、安心できるまで何度も確認行動を取ることです。この思考と行動のループが日常生活に支障をきたしていれば、専門機関への相談が推奨されます。
ひき逃げの可能性と警察からの連絡について
実際に事故が発生し、相手が通報していた場合、警察からは即日〜数日以内に連絡が来るのが一般的です。事故直後に連絡がない場合、数年後に突然警察が訪ねてくるというのはかなり稀であり、現実的には考えにくい状況です。
また、ひき逃げ事件では防犯カメラやドライブレコーダーの証拠、被害者の通報内容が重要視されるため、無傷・無通報で何年も経過してから警察が動くケースは極めて少ないと言えるでしょう。
体験談：同様の悩みを抱えていた人の声
「夜に道路の段差を通過しただけなのに、何度も人をひいたかもしれないと思い、Uターンして確認しに行きました。結果何もなかったのですが、毎回こうした確認をやめられず、心療内科を受診したところ、OCDの一種と診断されました。」
「最初は不安だけでしたが、次第に運転が怖くなって免許を返納しようかとも思いました。今では認知行動療法を受けて、確認行動が少しずつ減ってきました。」
対処法と受診のすすめ
まずは自分の不安が「現実的なものか」「繰り返し確認しているか」を客観的に見つめることが大切です。不安が日常生活に支障をきたしている場合は、心療内科や精神科での受診を検討しましょう。
特に、強迫性障害が疑われる場合は、薬物療法や認知行動療法（CBT）が効果的とされています。また、ひとりで抱え込まず、家族や専門カウンセラーに相談することも回復の第一歩です。
まとめ：不安に振り回されないために
運転中の加害恐怖は、まじめで責任感の強い人ほど感じやすいものです。しかし、それが過度になり、生活に影響を与えるようであれば、強迫性障害の可能性も視野に入れて対応すべきです。
自分を責めすぎず、必要に応じて専門機関に相談することで、不安をやわらげ、安心して運転できる日常を取り戻すことができます。