交通事故のあと、被害者からの請求内容に納得し、修理費や廃車代を支払って話がまとまったと思っていたら、後日になって入院費や休業補償などの追加請求をされた――こうしたケースは意外と少なくありません。この記事では、そのような追加請求にどう対応すべきか、法律的観点と実務的な対処法をわかりやすく解説します。
示談が成立しているとはどういうことか?
まず重要なのは、「示談が成立した」と言えるためには、示談書という書面が存在しているかどうかです。単に口頭で「もういいよ」「修理費だけで大丈夫」と言われた場合、それだけでは法的な示談成立とは認められにくいのが現実です。
仮に書面で「これ以上一切請求しない」という条項が含まれていた場合、その効力は非常に強く、後から追加請求された場合でも「示談済み」であることを主張できます。
口約束だけでは法的拘束力が弱い
交通事故に関しては、お互いの信頼関係だけに頼った口頭合意では、後日トラブルになるリスクがあります。特に被害者側が後から症状が悪化したり、精神的苦痛を訴えたりした場合、追加請求につながる可能性が高まります。
「話は終わったはずなのに」と加害者側が思っていても、示談書がない限り、被害者が請求を継続することは法的に可能です。
追加請求があった場合の適切な対応方法
被害者から新たに入院費や休業補償を請求された場合、以下のようなステップで対応するのが望ましいです。
- 請求の内訳を文書で明示してもらう
- 領収書・診断書・休業証明書などの証拠資料を確認する
- 支払い前に保険会社または弁護士に相談する
- 必要であれば、新たに示談書を交わす
感情的なやりとりを避け、冷静に書面で対応することがトラブル回避の鍵です。
民事請求に時効や制限はあるのか?
交通事故による損害賠償請求には、原則として3年の消滅時効があります。つまり、事故発生から3年以内であれば、追加での請求自体は可能です。
ただし、その内容が妥当かどうかは別問題で、医師の診断書や勤務先からの休業証明書など、正当性を裏付ける証拠が必要です。また、請求内容が不当だと感じた場合は、支払いを拒否し、話し合いや法的手続きで対応することが可能です。
「口約束示談」で起きた実際のトラブル例
実際にあった事例として、加害者が「修理費のみでいい」と口頭で合意し費用を払ったものの、数週間後に「むち打ちが発覚した」として被害者が100万円以上の損害賠償を求めてきたケースがあります。
このケースでは、示談書がなかったため裁判で争うことになり、最終的には医師の診断書をもとに一部の請求が認められました。口約束だけでは「法的な終結」にはならないことが明確になった一例です。
弁護士・保険会社の力を借りることが重要
このようなトラブルを防ぐためにも、任意保険に加入している場合は必ず保険会社を通じて対応することが基本です。示談交渉や追加請求の精査も代理で行ってくれるため、感情的な対立を避けられます。
また、少額の争いでも法的に対応したい場合は、法テラスなどの無料法律相談を活用し、状況を整理して対処することが有効です。
まとめ:書面での示談がない限り追加請求は可能
交通事故の賠償において、「もう話は終わった」という認識だけでは、後のトラブルを完全に防ぐことはできません。示談は必ず書面で行い、今後一切の請求をしないという文言を明記することが重要です。
もし追加請求が来た場合は、内容を精査した上で、感情に任せず冷静に対応しましょう。正しい知識と手続きが、あなたの権利を守る第一歩になります。