インターネットでの名誉毀損に関する法的リスクは、発信者にとって非常に重大です。特に「公訴時効」がいつからカウントされるのかは、実務的にもトラブルの焦点となる重要なポイントです。本記事では、投稿時と削除時のどちらが時効の起算点となるのかを中心に解説します。
名誉毀損罪の基本と時効の考え方
名誉毀損罪は刑法230条に規定されており、事実を摘示して他人の社会的評価を害する行為を処罰対象としています。公訴時効は刑法250条により、法定刑に応じて期間が定められており、名誉毀損罪の場合は3年です。
この「3年」がいつからスタートするかが、ネット上の書き込みのように長期間公開されている場合に争点となります。
投稿時が原則的な起算点
多くの裁判例や学説では、「犯行が終わった時点」、すなわち加害者が行為を完了した時が起算点とされます。ネット投稿でいえば、書き込みをアップロードした瞬間が起算点になるというのが原則的な考え方です。
その理由は、名誉毀損は「行為罪」であり、「結果」が続いているか否かは時効とは直接結びつかないとされているからです。つまり、仮に投稿が10年間残っていても、起訴できるのは投稿から3年以内という解釈です。
例外的な考え方もある?公開期間との関係
ただし、特定の状況下では投稿が継続的な被害を生んでいると判断され、「継続犯」として扱われる可能性も議論されています。例えば、管理者が明示的に削除可能であったにも関わらず放置していた場合などは、実務上の判断が割れるケースもあります。
このような特殊な状況では、「削除された時点」が新たな起算点として主張されることもありますが、現在の通説および裁判実務では一般的ではありません。
実務上の対策:記録の保全が鍵
被害を受けた側としては、時効を止めるためにも早期に警察や弁護士に相談し、証拠の保全(スクリーンショット・アクセスログなど)を確保することが重要です。
一方、投稿者側も不用意な書き込みを残しておくことで法的リスクを負い続ける可能性があるため、問題があると認識した場合は早急に削除し、謝罪などの対応を検討すべきです。
まとめ:時効の起算は投稿時が原則。ただし継続性の議論も
ネット上の名誉毀損については、原則として投稿時点が公訴時効の起算点とされます。したがって、削除の有無にかかわらず、3年を超えると起訴されることは一般的には難しくなります。
ただし、実務上は例外的な判断がなされる場合もあるため、個別のケースでは法律の専門家への相談が不可欠です。