近年、兵庫県において、元総務部長が「根回し」として特定の県議に私的情報を漏洩した問題が百条委員会で取り上げられました。この事例を踏まえ、“業務目的なら違法性が阻却されるのか”という疑問に、法律の視点から論理的に迫ります。
🔍百条委員会とは何か
百条委員会は地方議会が設置可能な調査委員会で、事実関係を徹底調査し、県民に報告する役割を持ちます。
ただし、法人格ではなく、法的拘束力はないものの、行政の説明責任を果たす重要な制度です【参照】。
💡違法性阻却と“業務の根回し”の境界
日本の刑法では、他人の個人情報を漏らすことは基本的に違法行為ですが、“業務上正当行為”としての違法性阻却が認められる場合もあります。
ただし、その適用には①目的の正当性②方法の相当性③他に手段がなかった等の要件が必要であり、“根回し”だけで自動的に阻却できるものではありません。
📚公益通報者保護との関わり
元県民局長の文書が公益通報に該当するなら、「公益通報者保護法」により、通報の目的が公益であれば処罰を免れる可能性がありますが、それは通報行為に限られます。
今回のように第三者への私的情報(例えば家族構成や健康・異動歴など)漏洩は、公益の範囲を超えるため、違法性が阻却される余地はほとんどありません【参照】。
⚖️法的な正当化が難しい具体例
たとえば、「県議に説明する必要がある」として私的情報を説明したケースでも、説明に必要な範囲を超えればプライバシー侵害となり、正当業務に該当しないと判断される可能性が高いです。
他に手段があるにもかかわらず“根回しに理由づける”論理は、刑法の正当化理論を逸脱しており、通常は認められません。
📝まとめ:違法性阻却は非常に限定的
- 百条委員会で取り上げられる内容=公益かどうかは別問題
- 公益通報に該当しなければ、違法性阻却の余地は極めて狭い
- 根回しだけでは正当業務と認められず、プライバシー法や情報漏洩の責任が問われる
✅最終結論
たとえ百条委員会に取り上げられる予定の内容であっても、元総務部長の「根回し」による私的情報漏洩が自動的に合法化されるわけではありません。法的には、目的・手段の相当性・代替手段の有無が慎重に検討され、プライバシー権侵害に該当すれば、違法性が阻却される可能性はほぼないと考えるのが妥当です。