交差点で多い事故のひとつが「右直事故」です。一般的には直進車優先の原則がありますが、直進車が信号無視をしていた場合は事情が大きく変わります。今回は、矢印信号に従って右折した車と、赤信号を無視して直進してきたバイクが衝突した場合、過失割合はどうなるのかを解説します。
右直事故の基本的な過失割合
通常、交差点での右折車と直進車の事故は「右折車:直進車=80:20」が基本とされています。これは直進車が優先であること、右折車には「安全に右折できるかどうかの確認義務」があるためです。
しかしこれは「直進車が信号を守っている」ことが前提です。信号無視などの重大な違反があれば、このバランスは崩れます。
直進車が完全な信号無視だった場合の考慮点
もし直進バイクが明らかな赤信号を無視して進入していた場合、その過失は大きく評価されます。裁判例や示談交渉の実務においては、信号無視は重大な過失として取り扱われ、過失割合の逆転も十分あり得ます。
矢印信号に従って右折していたのであれば、右折車側の信号は青の矢印、つまり「安全に右折できる権利」がある状況です。にもかかわらず、直進車が赤信号で突っ込んできたとなれば、直進側の過失は重くなります。
参考となる過失割合の修正例
- 通常:右折車80%:直進バイク20%
- 直進バイクが赤信号無視:右折車10〜20%:直進バイク90〜80%
- 明確な証拠あり(ドラレコなど):右折車0〜10%:直進バイク100〜90%
ただし、右折車にも「安全確認義務」があるため、完全な0%になることは少なく、「赤信号で車両が来ない前提でも、よく確認すべきだった」という判断が下ることもあります。
過失割合は証拠次第で大きく変わる
最も重要なのは証拠です。ドライブレコーダーや目撃証言があるかどうかで、過失割合は大きく変動します。特にバイク側が赤信号を無視したと証明できれば、右折車の過失は大幅に減免される可能性があります。
逆に証拠がない場合は「証言の食い違い」として、バイク側の信号違反が認められず、通常の過失割合(80:20)になる恐れもあります。
実例:過去の判例にみる割合の変動
過去の判例では、「直進バイクが赤信号を無視して右折車と衝突した事故」において、バイク側90%の過失が認定された事例があります(東京地裁 令和元年)。
この事例では、ドラレコ映像と現場の信号サイクル解析により、バイク側の信号違反が立証されました。
まとめ:信号無視の直進車には重い過失が認定される
矢印信号に従って右折した車と、赤信号を無視して直進してきたバイクとの右直事故では、直進側に大きな過失が認定される可能性が高くなります。ただし、それを主張するには客観的な証拠が不可欠です。
事故直後のドラレコデータ、警察への正確な説明、信号機のタイミング確認など、冷静かつ迅速な対応が今後の過失割合に大きな影響を与えることになります。