医療過誤が疑われる場面で、医師や医療機関に対して説明責任を求めたにもかかわらず、十分な説明が得られない場合、多くの患者や家族は不安や怒りを抱えるものです。この記事では、説明責任を果たしてもらえない場合に取るべき具体的な対応策を、法律的視点や実例も交えてわかりやすく解説します。
医療機関に課される「説明責任」とは何か
医師や医療機関には、患者に対して診療の内容や経過、治療方針、副作用のリスクなどを説明する義務が課されています。これは「インフォームド・コンセント」の考え方に基づき、医師法や民法上の注意義務としても位置づけられています。
特に医療過誤が疑われるケースでは、診療記録の開示や説明は、信頼回復とトラブル解決の第一歩とされています。
まずは文書で説明を求めよう：記録を残すことがカギ
口頭での説明要求に応じてもらえない場合は、内容証明郵便などの文書で正式に説明を求めることが有効です。書面での請求は、記録として残るため、後の法的手続きにも活用できます。
例：「◯月◯日に行われた治療についての経過と判断根拠について、文書での説明を求めます」というように、具体的な日時や内容を明記しましょう。
診療記録の開示請求を活用する
診療記録（カルテ）には、診療内容・投薬・手術記録・看護記録などが詳細に記載されており、過誤の有無を客観的に検討する上で非常に重要な資料です。
多くの医療機関では、所定の様式や申請書によりカルテ開示が可能です。万が一拒否された場合には、行政機関や弁護士を通じて対応を検討することもできます。
医療ADR（裁判外紛争解決手続）という選択肢
医療トラブルに特化したADR（Alternative Dispute Resolution）は、第三者機関が間に入り、話し合いによって問題を解決する制度です。費用も比較的安価で、医療事故調査支援センターや都道府県の医療安全支援センターなどが相談窓口となっています。
裁判に進む前に冷静な話し合いの場を設ける手段として、多くの患者が利用しています。
どうしても解決しない場合は民事訴訟も検討
説明拒否や過失が明らかな場合には、損害賠償請求を含む民事訴訟を検討する必要があります。この場合、医療問題に強い弁護士に相談することが不可欠です。
弁護士を通じてカルテの開示請求や交渉を行い、法的な対応を進めることで、説明責任を追及することが可能になります。
実際の相談事例：説明を拒否されたケース
ある事例では、手術後に合併症が発生した患者が医師に説明を求めたところ、十分な説明が得られなかったため、家族が医療ADRを利用し、結果的に医療機関側から謝罪と補償が行われました。
このように、冷静に記録と証拠を積み重ねることが、適切な解決への近道となります。
まとめ：冷静な対応と専門機関の活用が解決の鍵
医療過誤に関して説明責任を果たしてもらえない場合は、感情的にならず、文書による請求、記録の保存、専門機関への相談が重要です。すぐに裁判に頼るのではなく、段階的なアプローチをとることで、円満な解決の道が開ける可能性があります。
悩んだときは、一人で抱え込まず、医療問題に詳しい弁護士や医療ADRの相談窓口に助けを求めてください。