刑法208条「暴行罪」における暴行の範囲とは?威嚇行為や器物使用も暴行になるのか徹底解説

刑法第208条に定められている暴行罪。その成立要件である「暴行」の解釈は、単に人の身体に直接的に加えられる攻撃に限らず、近年は威嚇的な行為も広く対象とされる傾向があります。本記事では、銃の発砲や刃物の振り回しといった「威圧行動」が暴行罪に該当するかについて、判例や学説をもとにわかりやすく解説します。

刑法における「暴行」とは?

刑法208条の暴行罪の「暴行」とは、人の身体に対して向けられた有形力の行使を意味します(いわゆる狭義の暴行)。

ただし、実際の判例では「身体接触がなくても」、人に対する直接的・間接的な有形力の発動であれば暴行と認定されるケースがあります。例としては、「目の前で殴るしぐさ」「ナイフを突きつける」「物を投げつけるが当たらない」などが挙げられます。

銃を空に向けて撃った場合は暴行になるか?

たとえ発射方向が明確に人の身体を狙っていなくても、人の至近距離での銃の発砲は、それ自体が威嚇の目的であっても有形力の行使と評価される可能性があります。

刑事実務では「被害者の身体に向けられたと一般人が受け取れる程度の危険性・威圧性があるか」が判断基準です。たとえば、人質を脅す目的で天井や地面に発砲した場合、その効果が人質の行動に影響を与えたのであれば、「暴行の実行行為」に該当する可能性が高いと考えられます。

ナイフを振り回す行為はどう判断される?

実際に相手の身体に触れなかったとしても、相手の至近距離で刃物を振り回す行為は極めて高い威嚇性・危険性を持ちます。判例上も、暴行に該当するケースが多数存在しています。

たとえば「ナイフを持って狂ったように振り回し、相手が恐怖で動けなくなった」場合、暴行罪だけでなく、場合によっては脅迫罪や逮捕監禁罪との併合罪になる可能性もあります。

実務と判例から見る「非接触型暴行」の認定例

  • 目の前でゴルフクラブを振り回した(→暴行成立)
  • ガラスを叩き割り、相手が飛びのいた(→暴行成立)
  • 相手の足元に石を投げたが当たらなかった(→暴行成立)

これらはいずれも「身体に向けられた有形力」が客観的にあったと認定され、暴行罪が成立しています。

刑法208条の構成要件と成立に必要な要素

暴行罪の構成要件には次の3つの要素が含まれます。

  • ①人に向けられた有形力の行使があること
  • ②故意(暴行の認識・意思)があること
  • ③傷害の結果が発生していないこと(傷害があれば傷害罪に転化)

つまり「威圧する意図で銃や刃物を使用し、相手が萎縮・委縮して動けなくなる」程度であれば、暴行罪の成立余地があると言えます。

まとめ:暴行罪は“物理的接触”がなくても成立しうる

刑法における暴行は、接触の有無だけでなく、威圧性と危険性によっても判断されることが重要です。

拳銃を空に発砲したり、ナイフを振り回したりするような行為は、「暴行」として認定される可能性が極めて高く、相手の反応(萎縮・行動抑制)との因果関係が確認されれば、実行行為として十分評価されることになります。

特に刑法学や司法試験対策においては、「実行行為性の有無」「社会通念上の危険の程度」「被害者の受け取り方」などの複合的要素から判断する視点が求められます。

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