俳優として自身の演技力をアピールする映像資料の制作は、オーディションやマネージャーへのPRに欠かせません。しかし、既存の作品のシーンを利用する際には著作権の問題がつきまといます。本記事では、著作権法の観点から、どこまでが合法で、どこからがNGかを丁寧に解説します。
著作権法における「二次的著作物」の扱い
既存の作品を元にして映像を作成する行為は、著作権法において「二次的著作物の創作」に該当します。これは、原作の著作権者の許可が必要とされており、翻訳、翻案、変形などを含みます。
たとえば、ハリウッド映画の英語セリフを日本語に翻訳して演じる場合も「翻訳」と見なされ、著作権者の許諾が必要になります。つまり、たとえ非営利であっても無断使用は著作権侵害に該当するリスクがあります。
具体的なケース別の判断基準
- 海外作品を翻訳して演じる:翻訳は著作権上の翻案にあたり、無断での公開はNGです。
- 小説のシーンを再現:小説も著作物です。セリフや状況を再現する場合は許可が必要です。
- セリフも設定も変えず再現:これは最もリスクが高く、明確に著作権侵害となる可能性があります。
ただし、作品の著作権が消滅している(著作者の死後70年を経過)場合は、自由に使用可能です。シェイクスピアなどの古典作品が該当します。
YouTubeなどネットでの公開は要注意
たとえ収益を目的とせず、俳優資料としてYouTubeに公開する場合でも「公衆送信権」の侵害に該当する可能性があります。著作権法では、インターネットにアップロードする行為そのものが制限されています。
特にYouTubeは自動検出によってコンテンツが削除されたり、最悪の場合アカウント停止になるリスクもあるため、著作権者の許諾を得ない限りは避けるのが無難です。
どうすれば安全に映像資料を作れるか?
著作権侵害を回避しつつ魅力的な映像を作るには、次のような方法があります。
- オリジナル脚本を執筆または脚本家に依頼する
- 著作権フリーの素材(青空文庫など)を使う
- 既存作品の一部だけを参考にし、自分なりにアレンジする
また、大学の演劇サークルなどでは、短編の脚本を共有していることもあるので、それらを活用するのも一つの手です。
例外的に認められるケースはある?
ごく稀に「引用」として認められるケースもありますが、これは極めて限定的です。引用と認められるためには、次の条件を満たす必要があります。
- 引用の必然性がある
- 主従関係が明確(自分の作品が主)
- 出典を明記している
俳優の演技資料としての映像は、基本的にこれらの条件を満たさないことが多いため、引用として扱われる可能性は非常に低いです。
まとめ
俳優が映像資料として既存の作品を使う場合、著作権の観点からは慎重な対応が必要です。翻訳や再現、投稿を伴う場合は、たとえ収益目的でなくても無断で行うと著作権侵害となるリスクがあります。
安心して活動を続けるためにも、著作権のルールを守り、オリジナルの創作や権利クリアされた素材を活用することをおすすめします。