公正証書における「認知しない」条項の法的効力とは?未婚で子を授かった場合の認知に関する注意点

未婚の男女間で子どもが生まれた場合、父親による「認知」は重要な法的行為です。しかし、公正証書の中に「認知しないことに同意する」といった文言が入った場合、その効力はどうなるのでしょうか。本記事では、認知の法的性質と、公正証書に含まれる同意条項の有効性について詳しく解説します。

認知は私的契約では制限できない法的行為

日本の民法では、子どもの父が自発的に認知すること(任意認知)が認められています(民法第779条)。また、父が認知しない場合には、母または子が家庭裁判所に「認知の訴え」を提起することもできます(民法第787条)。

ここで重要なのは、認知は法律に基づく身分行為であり、契約によって制限や放棄することはできないという点です。つまり、公正証書に「認知しないことに同意する」と書かれていても、それによって将来の認知請求が法的に排除されることはありません。

「認知しないことに同意」は無効か?

結論からいえば、公正証書に「認知しない」旨の文言が記載されていても、法的な効力は限定的です。なぜなら、この種の条項は公序良俗に反し、無効とされる可能性が高いからです。

最高裁判所の判例でも、身分関係に関する権利義務は契約で制限できないという立場が示されています。したがって、この一文があっても、母や子が後に認知を請求することは妨げられません。

現実的な影響と実務上の注意点

実際には、「認知しないことに同意する」条項が含まれることで、精神的に圧力を感じて泣き寝入りするケースも少なくありません。しかし、たとえ署名・押印していたとしても、その内容が違法または無効であれば、後から撤回・無効確認をすることは可能です。

実際の裁判例でも、当初は父親に認知の意思がなかったとされても、後に子ども側の請求が認められたケースが多数あります。

認知を受けることで得られる法的効果

認知を受けると、子どもは法律上の「嫡出でない子」として、父と正式な親子関係になります。これにより、以下の権利が発生します。

  • 扶養請求権
  • 相続権
  • 戸籍上の父の記載

逆に、認知されない場合は、これらの法的保護を受けることが難しくなります。特に相続権については、認知がなければ原則として発生しません。

将来的な認知請求に向けてできること

まずは、認知の意思があるかどうかを記録に残すことが大切です。LINEやメールなどの文面も証拠になり得ます。また、父子関係の証明が必要な場合は、DNA鑑定などを準備することも視野に入れるとよいでしょう。

さらに、公正証書の内容に不安がある場合は、弁護士に相談のうえ無効確認を求める手続きを行うことも可能です。家庭裁判所への認知請求は、子ども本人または母親が行えます。

まとめ:認知に関する権利は契約で制限されない

公正証書に「認知しないことに同意する」と明記されていても、その条項は法的に無効である可能性が高く、認知を請求する権利を放棄したことにはなりません。認知によって子どもが得られる権利は非常に大きいため、不安な場合は専門家と連携しながら、冷静に手続きを進めることが大切です。

法律的には母と子にとって有利な制度が整っているため、泣き寝入りせずに正当な権利を主張する姿勢が重要です。

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