家具の設置作業中に傷をつけてしまい、設置業者が弁償して新品を用意したケースにおいて、傷ついた旧品の所有権は誰に帰属するのか。意外と見落とされがちですが、実務上や法的には明確な判断基準が存在します。
設置業者が新品を用意した場合の所有権の基本
まず押さえておきたいのは、設置業者が家具の代金を支払ったとしても、販売契約の当事者は販売店とユーザーである点です。つまり、家具の元の所有権は販売店にあり、設置業者が単に損害賠償の一環として弁償した場合でも、それが所有権の移転に繋がるとは限りません。
例えば、設置業者が傷つけた商品に対して新品を代替提供した場合でも、「弁償金を支払った=旧品の所有権を取得した」とは法律上みなされません。これは金銭の支払いが対価なのか、損害賠償の手段なのかで意味合いが変わってくるためです。
旧品の所有権が誰にあるのかを判断するポイント
判断に重要なのは、弁償にあたって何らかの取り決め(契約や合意)があったかどうかです。たとえば、次のような点がポイントになります。
- 販売店と設置業者の間で、旧品の取り扱いについて明示的な取り決めがあったか
- 弁償時に「旧品は回収不要」「処分は設置業者の裁量に任せる」等の文言があったか
- ユーザーまたは販売店が旧品を返却する意思を明示していたか
これらが明確でない場合、所有権は依然として販売店に帰属している可能性が高いです。
実務上のトラブルを避けるための対応策
こうしたケースでは、あいまいなまま旧品を処分・持ち帰ることはトラブルのもとになります。以下のような手続きを踏むのがベストです。
- 弁償時に文書(メールなどでも可)で「旧品の所有権を放棄する旨」または「設置業者に譲渡する旨」を明確にしておく
- ユーザーにも「旧品は○○の判断で処分します」と説明し、了承を得る
- 万一対立した場合は、第三者機関(弁護士・消費者センター等)に相談
法的に見ると、単に損害を補償したからといって自動的に旧品の所有権を取得できるわけではないため、こうした合意形成が重要です。
よくある誤解とそのリスク
「自腹で弁償したんだから、古いものは自分のものだろう」と考えるのは自然ですが、法的には根拠が乏しいです。この認識のまま旧品を勝手に持ち帰った場合、最悪「窃盗や横領」と捉えられるリスクすらあります。
また、旧品が高額家具やリサイクル資源として再販可能なものであれば、販売店側も所有権を主張する理由があります。
まとめ:旧品の所有権は合意がなければ販売店に
設置業者が弁償をした場合でも、旧品の所有権が移るとは限りません。ポイントは「明確な取り決め」があるかどうかであり、法的な立場から見ると所有権は販売店側に残るのが原則です。
トラブルを避けるためには、弁償時点で文書にて取り決めをしておくことをおすすめします。