離婚協議書を作成する際には、財産分与や養育費だけでなく、生活補償のような将来的な支払いについても明確に記載することが重要です。本記事では、夫婦の合意を法的に有効に残すための文言の書き方、公正証書の使い分け方について、実務的な観点から解説します。
財産分与で預金全額を取得する際の記載例
共有財産のうち銀行預金全額を取得する場合、口座番号の記載は任意ですが、特定性を高めるために記載するのが望ましいです。
例文:
「夫婦の共有財産である下記の金融機関口座にある預貯金(残高の多寡を問わず)については、全て妻○○が取得するものとし、夫△△は何らの異議を述べない。
【金融機関名】○○銀行○○支店 普通口座 口座番号:1234567」
複数の口座がある場合は、それぞれ記載しておくと後日のトラブル回避につながります。
離婚協議書は複数作成しても問題ない?
公正証書と通常の協議書の2通作成することは可能です。内容が一部異なっていても、当事者間の合意がある限りは法的に有効とされます。
例えば、夫の親に提示する目的で「養育費のみ記載したバージョン」を作成し、公正証書にする。そしてもう一通、生活補償(10万円支払い)を含めた詳細版を「夫婦間の署名・捺印付き協議書」として別に保管することができます。
養育費とは別の毎月支払いはどう記載する?
子供の養育費とは別に妻への生活補償や慰謝料的な月額支払いを受ける場合、その旨を具体的に明記することが重要です。
例文:
「夫△△は、養育費の支払い期間終了後も、生活補償の一環として妻○○に対し、202X年○月から妻が満60歳に達するまで、毎月10万円を支払うものとする。支払日は毎月末日とし、妻指定の口座に振込むものとする。」
このように「支払い目的・金額・期間・支払方法」をすべて具体的に記載することで、後々の執行力にもつながります。
公正証書にするものとしないものの使い分け
公正証書にするメリットは、強制執行力があること。つまり、相手が支払わない場合に裁判を経ずに差押えが可能です。
ただし、夫の親に見せる目的などがある場合、公開したくない条項(たとえば生活補償や慰謝料的金銭支払い)を省いたバージョンを公正証書にし、詳細版は夫婦間だけの私的契約書として別途署名・捺印し、保管する方法がよく使われます。
注意点とまとめ
- 口座番号は記載してもOK(明確化のため)
- 協議書は複数作成しても法的に問題なし
- 支払いは「目的・金額・期間・方法」をセットで記載
- 見せたくない内容は別紙として分けることが可能
最終的には、相手の合意と文書への署名・捺印があれば、通常の協議書も証拠力があります。ただし、強制執行を想定するなら、公正証書化が推奨されます。
まとめ
財産分与や生活補償の記載を明確にすることで、将来のトラブル回避につながります。協議書は複数作成可能であり、必要に応じて用途ごとに内容を分けることで、相手家族との関係にも配慮できます。
不安な場合は、公証役場での無料相談や、弁護士・行政書士への確認も検討してみてください。