ニュースや社会的な騒動のなかで「弁護士は嘘をついてもいいのか?」という疑問が浮かぶことがあります。特に、政治家や著名人の代理人として登場する場面で、発言の真偽や責任の所在が話題になることも。本記事では、弁護士がどこまで許されるのか、法律と倫理の観点からわかりやすく解説します。
弁護士には「嘘をついてはいけない」ルールがある
まず大前提として、弁護士は嘘をついてはいけません。弁護士法や弁護士職務基本規程により、誠実かつ公正な職務遂行が義務とされています。
弁護士職務基本規程第2条には、「弁護士は、品位を保持し、誠実に職務を行う」と明記されています。つまり、依頼人のためであっても、事実に反する主張や虚偽の説明は原則として禁止されているのです。
弁護士の発言が「事実に反していた」場合はどうなる?
たとえば、代理人弁護士が「卒業証書が存在する」と発言したが、後にそれが虚偽だったと判明したとします。この場合、弁護士の発言が「故意」だったか「依頼人の説明を信じた結果」だったかで評価が変わります。
明確な故意で虚偽を述べた場合:懲戒処分(戒告・業務停止・除名など)の対象になります。
依頼人の説明を基に話したが、後に誤りと判明:弁護士に法的責任が問われる可能性は限定的です。ただし、事実確認を怠った「過失」が重ければ、職務上の問題とされることもあります。
「自分も騙されていた」は通用するのか?
依頼人が虚偽の情報を弁護士に与え、弁護士がそれを信じて主張した場合でも、「騙されたから無罪放免」とは限りません。
弁護士には一定の調査義務や合理的な裏付け確認の責任があります。つまり、「騙された」こと自体は免責理由にはならず、どこまで調査を尽くしたかが問われます。
たとえば、卒業証書の存在を主張する場合、その現物を見たのか、コピーがあるのか、発行大学に問い合わせたかなど、確認の有無が重要視されます。
もし嘘が判明した場合、懲戒請求や損害賠償の対象にも
弁護士が嘘をついた、あるいは重大な事実誤認を流布した場合、市民や関係者は弁護士会に対して懲戒請求を行うことができます。
また、発言によって名誉を傷つけられたり損害を受けた場合には、損害賠償請求の対象になることもあります。
実際に過去にも処分例がある
過去には、弁護士が事実に反する主張を続けたり、依頼人と共謀して相手方を誹謗した結果、業務停止や除名といった重い処分を受けた事例があります。
こうしたケースでは、「弁護士であるからこそ、社会的責任が重くなる」という考え方が取られます。
まとめ:弁護士も「嘘」は厳しく制限されている
弁護士が依頼人の代理で発言する際、その言葉には法的・社会的な責任が伴います。意図的な嘘や事実誤認を広めた場合、懲戒処分や損害賠償の対象にもなり得るため、「騙された」と言ってもすべてが免責されるわけではありません。
弁護士の発言が信頼に値するものであり続けるためにも、本人の調査義務や倫理意識が極めて重要です。