交通事故で加害者が弁護士を代理人に立てた場合、原則として今後の連絡や損害賠償交渉はその弁護士を通じて行うことになります。しかし、代理人弁護士から長期間にわたり何の連絡もない場合、被害者側としては不安や不信感を抱くのも当然です。今回は、加害者側の弁護士と連絡が取れなくなった場合の対応策や、加害者本人に直接連絡することの法的・実務的な注意点について解説します。
加害者が代理人弁護士を立てた場合の基本ルール
弁護士が受任通知を送ってきた時点で、加害者本人は法的に「交渉当事者」ではなくなります。そのため、以降は弁護士を通じて連絡を取るのが原則です。これは、交渉の一貫性や誤解を防ぐために重要なルールです。
たとえば、加害者が不用意な発言をして後日「言っていない」と否定するようなトラブルを防ぐ意味でも、代理人とのみ連絡を取るべきという仕組みになっています。
連絡が取れないときにまず取るべき行動
まずは、受任通知に記載された弁護士事務所の連絡先に再度連絡を取ってみましょう。電話、メール、内容証明郵便など、証拠が残る形でコンタクトを試みることが重要です。
それでも返答が得られない場合は、日本弁護士連合会または所属弁護士会に相談するのが有効です。弁護士には職務上の「誠実義務」があり、著しく不誠実な対応をしている場合は懲戒請求の対象となることもあります。
加害者本人に直接連絡してもよいのか?
基本的には避けるべきですが、以下のような条件が重なった場合は例外的に連絡する余地があります。
- 弁護士に再三連絡しても応答がない
- 損害賠償交渉が完全に停止している
- 加害者が代理人契約を解除している可能性がある
このようなケースでは、「現在、弁護士との契約が継続しているか」の確認を目的として加害者に連絡することは、実務上認められる場合もあります。ただし、内容は丁寧かつ簡潔にとどめ、再交渉や金銭請求などは一切行わないことが重要です。
トラブル回避のための文書管理と記録
今後の法的措置や調停、訴訟に備えて、以下の書類や記録は保管しておきましょう。
- 弁護士との連絡記録(メール・通話履歴・内容証明など)
- 加害者との連絡履歴(過去に直接交渉した場合)
- 診断書や治療経過報告
- 損害額の根拠資料(交通費、休業損害、逸失利益など)
記録が整っていれば、万一裁判になった場合でも主張を裏付ける根拠として強力な武器になります。
弁護士に改めて依頼する選択肢
ご自身での対応が限界を迎えていると感じる場合は、法律相談や法テラスの無料相談を活用し、新たに弁護士に依頼するのも一つの選択肢です。弁護士が代理人となれば、相手弁護士に対して法的義務の履行を正式に要求することができます。
特に加害者が任意保険未加入の場合、請求の実現が困難になるケースもあるため、法的知見を持った専門家の関与が重要です。
まとめ:長期放置のままにはせず、適切な対応で解決を目指す
代理人弁護士と連絡が取れなくなったとしても、独断で加害者本人に接触するのは慎重に行うべきです。まずは証拠を残しながら弁護士に再度コンタクトを取り、それでも応答がない場合は弁護士会への相談や法的手段を検討しましょう。
時間だけが過ぎると時効などのリスクも生じかねません。早めの行動と記録管理が、円満かつ適正な解決への鍵となります。