交通事故と公務災害が重なるケースでは、補償の重複や手続きの複雑さが生じやすく、特に示談交渉のタイミングに悩む方が少なくありません。本記事では、公務災害認定結果を待たずに示談交渉を進めた場合のメリット・デメリットや、実際の対応方法についてわかりやすく解説します。
交通事故と公務災害の両立事案とは
業務中や通勤途中の交通事故で怪我を負った場合、公務員であれば「公務災害補償」が適用されることがあります。この場合、交通事故による加害者への損害賠償請求と、公務災害補償制度の給付が並行して関係してくるため、手続きが複雑になるのが特徴です。
例えば、公務災害の後遺障害等級が確定すれば、慰謝料や逸失利益の金額が大きく左右されることがあります。したがって、示談交渉を始めるかどうかの判断は、制度の性質を正しく理解することが不可欠です。
公務災害の結果を待たずに示談すると何が起きるか
最大の懸念は「後から損害が増えたと判明しても追加請求が困難になる」点です。示談書を交わした時点で、原則としてその内容に拘束されるため、公務災害の認定後に新たに慰謝料や逸失利益の増額要因が出ても請求できません。
また、損害賠償額と公務災害補償との関係では、加害者側の保険会社が「公務災害からの給付」を損害の一部として控除する(いわゆる二重取り防止)ため、最終的な受取額が減る可能性もあります。
示談の進行と弁護士の関与の重要性
事故直後から弁護士に依頼している場合、保険会社との交渉や法的リスクへの対応がスムーズに進む点で大きなメリットがあります。ただし、弁護士が「結果を待ちましょう」と言う場合、それは交渉上の不利を避けるための判断である可能性が高いです。
示談交渉を急いで行いたい場合は、弁護士に対して「公務災害の見通しが立たない中でも、進めるリスクは何か?」と明確に確認し、納得のいく形でスケジュール調整を行うことが大切です。
症状固定・非該当でも慰謝料は請求できる
後遺障害等級が非該当でも、入通院慰謝料や休業損害、交通費、物損などの損害については、通常どおり加害者側に請求できます。通院期間が8ヶ月とのことなので、入通院慰謝料だけでもある程度の金額になる可能性があります。
たとえば、自賠責基準における入通院慰謝料は「日額4,300円×通院実日数(または対象日数×2のうち少ない方)」で計算されます。裁判基準(赤本)ではさらに高額になります。
解決を早めたい場合の選択肢
解決を早めるためには以下の選択肢があります。
- 一部の損害だけで先に示談する:後遺障害部分だけを除外して示談書を交わす方法。
- 保留条項付き示談:「後遺障害が認定された場合には別途協議する」旨を記載して示談する方式。
- 弁護士と戦略的に相談:法律の専門知識を活かし、最適な交渉方法を提案してもらう。
ただし、いずれも加害者側保険会社の同意が必要なため、交渉力が問われます。
まとめ:焦らず慎重に判断することが大切
交通事故と公務災害が重なる場合、慰謝料請求や示談交渉には専門的な知識が不可欠です。公務災害の後遺障害等級の結果を待たずに示談することにはリスクが伴いますが、早期解決を希望する場合には弁護士と連携しながら慎重に対応することが重要です。
納得できる結果を得るためにも、感情的にならず、戦略的に対応を進めていきましょう。