家族間の相続は、本来ならスムーズに進めたいものですが、信頼関係が揺らいでしまった場合には慎重な対応が必要です。特に、印鑑証明を渡した後に相手の態度が急変し、不信感を持った際には、「どう守るか」が重要なポイントとなります。
遺産分割協議書に明記されるべき基本情報
遺産分割協議書には、法的効力を確保するために以下の項目が明記されている必要があります。
- 誰がどの遺産を取得するかの具体的な記載
- 預金や不動産などの財産の詳細(金融機関名・支店・口座番号など)
- 名義変更や払戻しの手続きに関する代表者の指定
- 一時的に誰の口座にお金が入るか、そして各相続人への振込時期
このような記載が欠けたままでは、たとえ印鑑証明を添付していても、実務上・法的にもリスクが残ります。
印鑑証明を渡した後の懸念とその正当性
印鑑証明書と実印がセットで揃うと、法的書類において「本人の意思による署名・捺印」とみなされるリスクがあります。仮に遺産分割協議書に勝手に押印されたとしても、それを覆すには“押していない”という証拠を本人が示す必要があります。
このため、印鑑証明を相手に渡すのは極めて慎重に行うべき行為であり、既に渡してしまった後で不安を感じたなら、その懸念は決して過剰ではありません。
家庭裁判所の遺産分割調停という選択肢
家庭裁判所の調停を使えば、中立的な調停委員と裁判官が立ち会う場で協議が進められます。金銭的にも手続き的にも訴訟よりハードルが低く、費用は基本的に収入印紙代(1,200円程度)と切手代のみです。
ただし、実際に調停が始まるまでには申立から数週間〜1ヶ月程度かかるため、早めの申立が重要です。
今すぐ取るべき低コストで確実な対応策
- 渡した印鑑証明が何に使われるか確認するため、弟に分割協議書のコピー提供を求める
- 既に印鑑証明を悪用された可能性がある場合は、弁護士相談+家庭裁判所調停の申立を同時進行で準備
- 印鑑証明書の有効期限(発行日から3ヶ月以内)を経過させ、新たに必要な場面で提出し直す
- 相手が不誠実な態度を取る場合、内容証明郵便で正式な連絡記録を残す
一人で進めるのが難しい場合は、法テラスの無料相談を利用すると、初回の弁護士費用も抑えられます。
まとめ:不安を感じたら「話し合い」より「記録と制度」の活用を
印鑑証明を渡したあとに態度が急変した相手に対しては、口約束や期待だけで行動するのは危険です。明確な合意書がないまま動いてしまえば、後々のトラブル回避が難しくなります。
家庭裁判所の調停は費用を抑えて安全に進める有効な手段。早めに行動することで、大きな損失を防ぐことができます。