退職者が不満や恨みを持っていた場合、意図的に知人を応募させて職場に悪影響を与えるような行動を取る可能性も否定できません。こうした「悪意ある応募者」が職場に入ってきた場合、法的にはどのように扱われるのか?企業として事前にどのような対策が取れるのか?本記事ではこの問題について法的・実務的な観点から詳しく解説します。
「意図的な嫌がらせ目的での就職」は違法か?
知人を使って企業に潜入させ、職場の内部情報を収集したり、悪意ある行為を目的として就職することは、明確に「違法」と言い切れるわけではありません。
しかし、職場秩序を乱す行為、営業秘密の漏えい、業務妨害があった場合には、刑事・民事の責任が問われる可能性があります。たとえば、虚偽の目的で就職し、故意に情報を流した場合、不正競争防止法違反や背任、名誉毀損・業務妨害などが成立することがあります。
実際に起こり得る悪影響とその兆候
以下のような兆候があれば、悪意を持った応募者が入り込んでいる可能性も考えられます。
- 明らかに内部事情に詳しい
- 退職者の知人と判明したが事前に申告がなかった
- 同僚や上司のプライバシーを詮索するような言動がある
- 会社の方針や内部運用を否定するような発言が多い
このような場合、証拠を確保した上で、速やかに就業規則に基づく対応を検討することが重要です。
企業としてできる予防策
悪意ある応募者を完全に排除することは難しいですが、以下のような対策でリスクを軽減できます。
- 応募経路の記録:紹介者の有無、関係性を面接で確認する
- 誓約書の活用:入社前に秘密保持義務や社内秩序遵守の誓約書を提出させる
- リファレンスチェック:前職情報や第三者評価を可能な範囲で照会する
- 就業規則に懲戒条項を明示:悪意ある行為に対して解雇も含めた対応が可能なよう整備
特にリファレンスチェックは、転職市場でも徐々に浸透しており、応募者が誠実かどうかを確認する手段として効果的です。
悪意ある行為が発覚した後の対処
雇用後に悪意のある行為が発覚した場合、以下のような対応が法的に可能です。
- 就業規則違反による懲戒解雇:秩序を乱す行為があれば対象となり得ます
- 民事訴訟:会社に損害が出た場合、損害賠償請求も検討可能
- 刑事告訴:営業秘密の漏えい、信用毀損などがあれば警察へ相談
ただし、行動の悪意や損害の具体性を証明することが重要です。単に「怪しい」だけでは法的な処分は難しいため、記録や証拠の収集が欠かせません。
まとめ:潜在的な内部リスクへの備えが職場を守る
悪意ある元同僚が知人を使って職場に嫌がらせをするような事態は、極めて稀ではあるものの起こり得るリスクです。しかし、法的にはその目的が明確であり、実際に被害が出れば対応は可能です。
企業としては、応募者のチェック体制を整え、就業規則と誓約書で予防線を張り、問題が起きた場合には証拠を元に厳正な対応を取ることが求められます。
リスクマネジメントと内部統制の徹底が、健全な職場を守るカギとなるのです。