家族内で遺産に関する問題が起きることは珍しくありません。特に「公正証書遺言」をめぐっては、遺言者の意思がどこまで反映されているか、他の家族にとって不利益な内容ではないかが問題となることがあります。今回は、公正証書遺言が一部の家族によって進められてしまった場合の影響や対策について、法的観点からわかりやすく解説します。
公正証書遺言とは?家族の同意は必要か
公正証書遺言は、公証人が作成する法的効力の強い遺言書です。原則として、遺言者本人の意思が最優先されるため、他の家族の同意は不要です。
つまり、遺言者が自らの意思で作成したものであれば、たとえ他の相続人が内容に不満を持っていたとしても、法的にはその内容が有効となります。
家族の働きかけで内容が変えられることはあるか
仮に姉など特定の親族が遺言者に対して働きかけ、特定の相続人に有利な内容へ誘導したとしても、遺言者本人の意思が明確であれば問題にはなりません。
しかし、次のような場合は法的に問題となる可能性があります。
- 遺言者が判断能力を欠いていた(認知症等)
- 脅迫や強要によって作成された
- 明らかに公平性を欠く内容
このようなケースでは「遺言無効確認の訴訟」を家庭裁判所に起こすことが可能です。
過去に取られたお金を返してもらえるか
すでに財産が不当に奪われていた場合、それが遺言によって正当化されたかのように見えることもあります。しかし、その行為が違法・不当であれば「不当利得返還請求」や「損害賠償請求」が可能です。
たとえば、「生活費として取り上げられたが、実際は個人的に使われていた」などの明確な証拠があれば、法的手段で返還請求できます。
遺言作成を阻止できるか?事前対応のポイント
家族が一方的に遺言作成を進めている場合、家庭裁判所に「後見開始の審判」を申し立てることで、遺言能力の有無を調査してもらうことができます。
また、日本公証人連合会の公式サイトを通じて、公証人に事情を伝えることもできます。
遺言作成に疑義がある場合は、弁護士と連携し、証拠(会話録音・LINE・メールなど)を早期に確保しておくことが非常に重要です。
遺言書作成後にできる対抗手段はあるか
すでに公正証書遺言が作成された場合でも、次のような法的措置が可能です。
- 遺言無効確認訴訟(判断能力がなかったなど)
- 遺留分侵害額請求(最低限の相続分の確保)
特に「遺留分」は相続人に保障された最低限の取り分ですので、公正証書遺言であっても無効にできる範囲があります。
まとめ:家族に知らされなくても有効だが、対抗策も存在する
公正証書遺言は家族に相談せずとも作成可能であり、基本的には遺言者の意思が最重視されます。しかし、その意思が不明確だったり、不正が疑われる場合には法的に争う余地があります。
不当な扱いを受けたと感じたら、早めに法律の専門家に相談し、証拠を整え、適切な法的手続きを検討することが大切です。