不同意性交等罪の成立要件と被害届の現実的な可能性とは|泥酔・記憶喪失のケースを中心に解説

性被害の中でも「不同意性交等罪(旧・強制性交等罪)」は、近年の法改正で定義や要件が見直され、より広い被害実態に対応できるようになりました。特に、泥酔状態や意識喪失中の行為に関して「同意がなかった」ことを立証する難しさや、事後に関係が継続していた場合の法的評価は複雑です。本記事では、現行法の下で不同意性交等罪が成立する条件、捜査や起訴の可能性、証拠の重要性などを詳しく解説します。

不同意性交等罪とは何か

2023年の刑法改正により「不同意性交等罪」は、「相手の同意がない性交その他のわいせつな行為」を処罰対象とする罪として新設されました。従来は暴行・脅迫の存在が必要でしたが、改正後は「同意のない状態」に乗じた行為も処罰されます。

このため、泥酔や意識喪失など「抵抗や拒否の意思表示ができない状況」を利用した性交についても、不同意性交等罪として立件される可能性があります。

泥酔状態や記憶喪失中の性交は「不同意」に該当するか

泥酔により意思表示が不可能な状態は、法的には「同意できない状態」として扱われます。たとえば、意識がなく、本人が行為の内容や状況を認識していなかった場合、形式的な合意や受け入れのそぶりがあったとしても、それは同意とは見なされません。

このような状況での性交が、相手にとって一方的なものであれば、不同意性交等罪が成立する余地があります。ただし、捜査機関がそれを立証するためには、状況の客観的な証拠や証言が非常に重要となります。

後日、関係が継続していた場合の法的評価

事件後に当事者が交際関係や性的関係を継続していた場合、それが「最初の行為への同意があったことの証明」には直結しません。なぜなら、当時の心身の状態や記憶、恐怖や混乱などの要素が影響するためです。

実際に、事件直後の被害者が「自分にも非がある」と思い込んだり、相手との関係を切れなかったケースでも、後に法的責任が問われた事例はあります。

被害届提出の現実的なハードル

不同意性交等罪の被害届を提出する際、警察はまず被害者の話を詳細に聴取し、事件当時の状況や証拠の有無を検討します。特に泥酔・記憶喪失のケースでは、本人の証言が断片的になりがちですが、次のような客観的証拠があれば信頼性が高まります。

  • 当日のLINEやSNSのやり取り
  • 目撃者(バーの店員など)の証言
  • 病院の診断記録(性的被害外来など)
  • 日記や録音、メモなど

証拠がある程度揃っていれば、被害届は受理され、事情聴取や捜査が開始されます。ただし、起訴に至るかは検察が「合理的な疑いを超える証明が可能か」を判断するため、法的ハードルは依然として高いのが現実です。

相談先とサポート体制

性被害に関する相談は、以下のような専門窓口に連絡することが推奨されます。

  • 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター:こちら
  • 警察の性犯罪被害専用相談窓口(#8103:ハートさん)
  • 女性センターや弁護士による無料法律相談

被害者自身が一人で抱え込まず、専門機関と連携しながら証拠収集や届け出を行うことが、適切な対応と保護につながります。

まとめ:泣き寝入りせずに相談と行動を

泥酔や意識がない状態での性交は、たとえ事後に関係が継続していても、不同意性交等罪が成立する可能性が十分にあります。法改正によって「同意のない性行為」に対するハードルは低くなり、被害者保護の視点が強化されています。

「今さら遅い」「もう関係を持ってしまったから」と思わず、まずは専門機関に相談することが大切です。法的には時間が経過していても、証拠が揃っていれば捜査・起訴の対象になる可能性はあります。自分を責めず、冷静に行動しましょう。

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