インターネット上で特定の政党の広告に対して「不快」と表明する投稿をした場合、法的に問題になる可能性があるのかと気になる方も多いでしょう。この記事では、SNS等での意見表明と名誉毀損、開示請求、損害賠償などとの関係を、法律的な観点からわかりやすく解説します。
表現の自由は憲法で保障されている
日本国憲法第21条では、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由」が保障されています。従って、政治的な広告に対する感想や評価を個人的に述べること自体は基本的に自由です。
「〇〇党の広告が不快だった」と述べることは、あくまで主観的な感想であり、名誉毀損や侮辱に該当しない限りは法的問題に発展しにくいと考えられます。
名誉毀損や侮辱にあたるケースとは?
一方で、内容や文脈によっては名誉毀損(刑法第230条)や侮辱罪(刑法第231条)に該当する可能性があります。たとえば、「〇〇党は犯罪集団だ」「〇〇党は詐欺師ばかり」などと事実無根の内容で相手の社会的評価を著しく損なう投稿は問題となり得ます。
また、誹謗中傷的な言葉を繰り返すことで人格攻撃と受け取られるような投稿も、侮辱罪や民事上の不法行為とされるリスクがあります。
開示請求や損害賠償請求が通る場合
インターネット上で匿名の投稿者を特定するには、プロバイダ責任制限法に基づいて開示請求がなされます。ただし、開示が認められるには、「権利侵害が明らかである」ことが必要です。
「〇〇党の動画広告が不快だった」という程度の表現では、通常その要件を満たさないとされ、開示請求や損害賠償請求が裁判所で通ることはほとんどありません。
実際にあった判例や事例
過去の判例では、特定個人や団体を誹謗中傷し、「事実に反する内容を拡散した」ことが確認された場合に、名誉毀損が成立しています。一方で、「不快」や「好きではない」といった主観的意見にとどまる発言に関しては、表現の自由の範囲内とされる例が多いです。
たとえば、ある企業のCMに対して「不快」「見ると気分が悪くなる」と書いたユーザーに対し、企業側が開示請求した事例では、裁判所は「個人的な感想の範囲内」として開示を認めませんでした。
リスクを減らすために気を付けること
- 特定の政党名を繰り返し名指ししない:意図的に攻撃していると受け取られやすくなる
- 事実ではなく感想であることを明示:「私は〜と思う」といった表現にする
- 誇張や嘘、根拠のない断定は避ける:名誉毀損リスクが高まる
まとめ
政党の広告に対して「不快だった」と投稿するだけで、逮捕されたり損害賠償を請求されたりするリスクは通常極めて低いです。ただし、表現が名誉毀損や侮辱と受け取られるようなものであれば、法的トラブルに発展する可能性もゼロではありません。
言論の自由を守りつつ、他人や団体の権利を侵害しないよう心がけて、健全なインターネット利用を目指しましょう。