車対車の事故において、わずか数キロの低速であっても、相手が人身事故として届け出れば、法律上は「人身事故」として処理される可能性があります。「痛くも痒くもないのに人身?」と感じる場面は少なくありません。本記事では、軽微な接触事故でも人身事故になる理由や、取消が可能かどうか、保険会社や弁護士の対応について詳しく解説します。
人身事故とは?物損事故との違い
人身事故とは、事故により「人が負傷した」とされるケースで、交通事故証明書も「人身」として発行され、加点や罰金などの行政処分・刑事処分の対象になります。一方、物損事故では車両や物の破損のみが対象で、基本的に運転者への処分はありません。
相手が病院を受診し、診断書を提出した場合、警察が人身事故扱いに切り替える義務が生じるため、運転者が「怪我はないはず」と思っていても、状況は変わります。
2〜3km/hでも人身扱いになる理由
衝撃が軽微であっても、むち打ちなどの症状は翌日以降に出る可能性があります。そのため、スピードや衝撃の大きさがそのまま人身事故か否かの基準になるわけではありません。
実際には、事故直後に相手が「大丈夫」と言っていたにもかかわらず、数日後に首や肩の痛みを訴え、医師が診断書を出すことで人身事故に切り替わるケースは少なくありません。
人身事故の取消は可能?どのように対応するか
原則として、相手が診断書を提出して警察が受理した場合、人身事故の取消は困難です。ただし、相手が協力的で診断書を撤回したい意向があれば、物損事故に戻る可能性もゼロではありません。
取消が認められる可能性があるのは次のようなケースです。
- 相手が誤解して人身で届け出たことを認める
- 医師の診断が誤診だったことが明らかになる
- 警察への届出が完了していない初期段階
ただし、いずれもハードルは高く、加害者側だけの申し出で取消されることは基本的にありません。
保険会社や調査会社はどこまで調べる?
保険会社は、被害者の通院状況・治療内容・事故状況を調査し、必要であれば示談交渉を通じて過失割合や賠償額を調整します。人身事故で慰謝料や治療費が請求される場合、専門の調査会社(アジャスター)が派遣され、事故車両の損傷や医療記録を確認することもあります。
もし「実際には怪我をしていないのでは?」という疑問がある場合、保険会社に医学的な調査(医療照会)を依頼することも可能です。
弁護士に相談すべきケースとは?
以下のような状況であれば、弁護士の関与が効果的です。
- 相手が不当に人身扱いを主張していると感じる
- 刑事処分(免停・罰金)を回避したい
- 慰謝料や通院日数に疑問がある
弁護士は、警察への対応や調査資料の入手、相手方との交渉などを代行してくれるため、専門的な反論をしたい場合は早期相談がカギとなります。
弁護士費用特約が自動車保険に付帯されている場合は、自己負担ゼロで相談・対応が可能な場合もあります。
まとめ:低速でも人身事故になることはある。対応は冷静に
時速2〜3kmの接触であっても、相手が怪我を主張すれば人身事故として扱われる可能性があります。取消は原則困難ですが、状況によっては交渉や証拠により争う余地もあります。
不当な申告や過大な請求があると感じたら、保険会社・調査会社と連携し、必要であれば弁護士に相談することで、冷静に対処していきましょう。