詐欺罪と聞くと、何千万円、何億円という被害がある大規模事件をイメージしがちですが、30万円程度の被害でも刑事責任が問われることは十分にあります。この記事では、複数人から合計数十万円を騙し取ったケースにおいて、どのような刑罰が科されるのか、判例を交えて詳しく解説します。
詐欺罪の基本:成立要件と刑罰の概要
詐欺罪(刑法246条)は、「人を欺いて財物を交付させた者」に対して、10年以下の懲役が科される犯罪です。被害金額にかかわらず、欺く行為と財物の交付という因果関係が成立すれば罪になります。
つまり、30万円という金額であっても、明確な詐欺の意思と手口が確認されれば、逮捕・起訴され、最悪の場合は懲役刑が下される可能性もあるということです。
複数被害者がいる場合の量刑への影響
単発の詐欺よりも、複数人に対して繰り返し詐欺行為を働いた場合は「常習性」があるとされ、量刑が重くなる傾向があります。1人あたりの被害額が30万円であっても、被害者が10人いれば300万円。裁判所は被害総額だけでなく、犯行回数や手口の巧妙さなども勘案します。
また、被害者が高齢者や判断力の乏しい人である場合、「悪質性が高い」と判断される可能性があり、執行猶予がつかず実刑となることもあります。
30万円詐欺で実刑となる可能性は?
実際の判決例では、以下のような傾向があります。
- 被害者1人、30万円程度:初犯で反省の態度や弁済があれば、執行猶予付き判決(懲役1年6ヶ月〜2年程度)
- 複数被害者、計数十万〜100万円未満:執行猶予付き判決または短期の実刑(懲役1年〜2年6ヶ月)
- 詐欺常習者、弁済なし:懲役2年〜3年の実刑判決もあり
つまり、加害者の反省態度、弁済の有無、前科の有無などが大きな判断材料となります。
実例:30万円詐欺で懲役刑となったケース
実際の判例(東京地裁・令和元年)では、被害者3名に対し1人あたり30万円前後を詐取した被告人が、全額の弁済をせず、反省も不十分だったとされ、懲役2年の実刑判決が下されました。
一方で、同様の金額規模でも、初犯で被害弁済を行い、就職先の確保など社会復帰の準備が整っていた場合には、執行猶予がついた判例もあります。
まとめ:少額でも繰り返せば重大な犯罪に
30万円という金額は少額に思えるかもしれませんが、それが複数人に及び、かつ悪質な手口を用いた場合には、十分に実刑判決が下される可能性があります。金額だけでなく、「だまし方」「態度」「被害者の属性」なども判断に大きく影響します。
詐欺被害にあった場合は、警察や弁護士に速やかに相談することで、加害者の処罰や被害回復につながる可能性があります。