遺産分割協議書を作成する際、家や土地の名義変更に意識が向きがちですが、預貯金の取り扱いも非常に重要なポイントです。万が一記載を省略してしまうと、思わぬトラブルや手続きの遅延が生じる可能性があります。
遺産分割協議書とは何か?
遺産分割協議書とは、相続人全員で遺産の分け方について合意し、それを文書化したものです。この文書は、相続登記や預貯金の名義変更など、さまざまな手続きに使われます。
銀行や不動産登記などの手続きにおいては、遺産分割協議書の提示が必要となるため、内容が不完全だと受付を拒否されることもあります。
預貯金の記載はなぜ重要か?
預貯金は現金化しやすく、金額も明確なため、相続人間で揉める原因になりやすい財産です。そのため、どの口座を誰に相続させるのかを明記しておくことが重要です。
たとえば、「○○銀行○○支店 普通預金 口座番号×××××× を長女○○が取得する」など、具体的に記載することで後の手続きもスムーズになります。
「一時的に母に渡す」場合の記載方法
生活費として母に一時的に預貯金を渡すという合意がある場合でも、その旨を協議書に記載しておくと誤解を防げます。たとえば以下のように表現されます。
「○○銀行の全預貯金については、母○○が生活費として一時的に管理し、必要に応じて子らに分配する」
ただし、曖昧な表現は避け、今後の権利関係に影響を及ぼさないよう慎重な文言を選ぶべきです。
記載しない場合のリスク
預貯金の記載がなければ、金融機関での名義変更や払戻手続きが進まないことがあります。各銀行では、明確な分割内容の記載がない協議書は無効と判断されるケースもあるため注意が必要です。
また、あとから相続人の一人が「こんな合意はしていない」と主張すれば、口座凍結が解除されず、トラブルに発展する恐れもあります。
実例:預貯金を省略した協議書で生じた問題
あるケースでは、家だけを記載して預貯金の記載をしなかったため、母親が預貯金を引き出そうとした際に銀行から「記載がないため手続きできません」と断られました。
結局、改めて協議書を作り直し、全員の署名・押印を取り直すことになり、手続きに3ヶ月以上を要したそうです。
まとめ:預貯金の記載は「必須」と心得よう
遺産分割協議書には、預貯金を含むすべての相続財産を明記することが原則です。「とりあえず話はついているから大丈夫」ではなく、文書で明確に合意内容を記載することが、将来のトラブル防止につながります。
不安な場合は、司法書士や弁護士に確認しながら作成を進めることをおすすめします。