刑事事件の被害にあった際、警察から「陳述書を書いてほしい」と依頼されることがあります。しかし中には、それを拒否する人もいます。今回は、なぜ被害者が陳述書の提出を拒否するのか、またその背景や法的意味について解説します。
そもそも陳述書とは何か?
陳述書とは、被害者が事件の詳細を時系列に沿って文章化した文書で、警察・検察が捜査や立件の参考資料とするものです。
これは被害届とは異なり、必ずしも法的に提出を義務づけられているものではありませんが、加害者の処分の内容や捜査の方向性に影響を及ぼすことがあります。
なぜ警察は陳述書の提出を求めるのか
警察が陳述書を求める理由は、被害者の感情や処罰感情、被害の実態を詳細に把握したいからです。特に少年事件や傷害・恐喝などでは、被害者の心情や被害の深刻さが処分の重さに関わってきます。
たとえば、「精神的に強いショックを受け、生活に支障をきたした」などと具体的に書かれていれば、加害者への処分が厳しくなる可能性があります。
被害者が陳述書を拒否する理由
では、なぜ被害者は警察の依頼を断ることがあるのでしょうか?主な理由には以下が挙げられます。
- 事件に関わりたくない・早く忘れたい
- 加害者が未成年で、あまり重い処罰は望まない
- 報復や逆恨みを恐れている
- 書類作成が面倒、心理的に負担
とくに未成年が加害者の場合、「将来があるから処罰は求めない」と考える人も少なくありません。
被害届と陳述書の違い
誤解されやすいのが、「被害届を出したら必ず陳述書も出さなければならない」という認識です。実際は、被害届だけでも警察は捜査を開始できます。陳述書はあくまで任意であり、提出しないことに法的問題はありません。
ただし、事件が不起訴処分になる可能性や、軽微な扱いとなるリスクもあるため、警察からの説明をよく理解したうえで判断することが大切です。
実際の事例:YouTubeの話から読み取れる背景
あるYouTubeで紹介されたエピソードでは、被害者が未成年からカツアゲされたが、警察の陳述依頼を拒否したとのことです。
このようなケースでは、「加害者が少年であり、過剰な処罰は望まない」「事件化はしても協力は最小限にしたい」といった思惑があったと推測されます。また、被害者自身が警察対応に疲れ、精神的にこれ以上関わりたくないという場合も考えられます。
まとめ:陳述書の提出は義務ではないが、意味は大きい
陳述書はあくまで任意の提出ですが、提出の有無で加害者の処分や事件の捜査に影響を及ぼすことがあります。提出を迷う場合は、信頼できる弁護士や被害者支援センターなどに相談するのが安心です。
一方で、被害者自身の精神的な負担や安全を最優先に判断することも、正当な選択肢であるといえるでしょう。