傷害事件などの刑事事件では、加害者と被害者の関係や時間の経過により、事件を打ち切りたいと考える被害者もいます。特に「すでに数年が経っている」「傷も軽微だった」などの状況では、被害届の取り下げができるか悩まれる方も多いのではないでしょうか。この記事では、傷害事件における被害届の取り下げの可否やその影響について、実務と法律の両面から解説します。
被害届とは何か?告訴との違いも理解しよう
まず「被害届」とは、被害者が警察に対して犯罪の被害に遭ったことを知らせるための届け出です。これは刑事手続きのスタート地点にあたります。
一方「告訴」は、被害者が「犯人を処罰してほしい」と意思表示をするもので、刑事手続きの中でもより積極的な意味合いを持ちます。傷害事件は告訴不要罪に分類されるため、告訴がなくても捜査・起訴が可能です。
被害届を取り下げることは可能か?
原則として、被害届は取り下げることができます。ただし、取り下げたからといって捜査が自動的に終了するわけではありません。事件の重大性や捜査の進行状況によっては、警察や検察が独自に捜査を継続・送致する場合もあります。
特に傷害事件の場合、公共の秩序を守る観点から、被害者の意向に関わらず処罰対象となることがあります。
時間の経過と事件の扱い
傷害罪の公訴時効は7年です。したがって、事件から3年が経過していても、時効には至っていないため、法的には捜査・起訴は可能な期間です。
ただし、事件の内容が軽微で、被害者側が取り下げを希望し、加害者にも再犯歴などがない場合は、実質的に不起訴や捜査の終了となるケースもあります。このような判断は、捜査機関(検察・警察)が総合的に行います。
被害届の取り下げ方法と注意点
被害届を取り下げる場合は、通常は所轄の警察署へ出向き、書面での「取り下げ届」を提出する必要があります。電話のみでの意思表示は、正式な取り下げとはなりません。
また、相手と金銭的な示談が成立している場合は、その内容を記載した示談書を添付することで、より円滑な処理が期待できます。
示談の有無が捜査結果に影響する
被害届の取り下げに加え、加害者と被害者が和解し、示談が成立している場合は、検察が不起訴処分とする可能性が高くなります。示談金の支払いや謝罪文などを含めて、相手が誠意ある対応をしていることが前提です。
逆に、加害者に反省の様子が見られず、社会的影響が大きい場合は、示談があっても起訴される可能性も否定できません。
まとめ:取り下げの意思は尊重されるが、最終判断は捜査機関
被害届は基本的に取り下げ可能ですが、それにより事件が完全に終了するとは限りません。傷害事件の性質や時効までの期間、加害者の態度などを踏まえて、最終的には警察・検察が判断します。
取り下げを希望する場合は、所轄の警察署へ出向き、書面を提出するのが確実です。不安がある場合は、法テラスや弁護士に相談することをおすすめします。