離婚や別居後に元配偶者から子どもの大学費用を請求されるケースは少なくありません。特に、進学について一切相談がなかったにもかかわらず高額な費用を求められた場合、「支払う義務があるのか?」と疑問を感じるのは当然です。本記事では、奨学金の有無や事後報告での進学、さらには子どもが実子ではない可能性がある場合において、大学費用の支払い義務がどのように判断されるのかを解説します。
大学進学費用の請求はどこまで正当か?
まず大前提として、親には子の教育費を負担する「扶養義務」があります。これは未成年だけでなく、大学進学などにより成人後も扶養が必要とされる場合に一定の範囲で続きます。しかし、これは「実子」であり、かつ進学に関する意思決定に親として関与できる立場にあった場合に限られるのが原則です。
相談なく進学が決定され、さらに大学進学自体が合理的であるとは言えない場合や、親子関係に重大な断絶がある場合などには、大学費用を拒否できる可能性もあります。
奨学金を借りている場合の親の負担義務
子どもが奨学金を借りている場合でも、「入学金や初期費用は親が負担すべき」と主張されることはあります。しかし、奨学金の内容や使途、支給時期によっては、その資金で賄える可能性もあり、必ずしも親が追加で支払う必要があるとは限りません。
たとえば、奨学金が一括で支給されている場合や、入学金にも充てられる種類の奨学金であるなら、その範囲でカバーされていると主張することが可能です。
子どもが実子でない場合の法的責任
仮に子どもが実子でないと確信している場合、その子に対する扶養義務があるかどうかが大きな論点となります。民法上は、婚姻中に生まれた子は夫の子と推定されるため、家庭裁判所に「嫡出否認の訴え」を行わない限りは、形式的には父親と見なされます。
したがって、「扶養義務はない」と主張するには、まず親子関係不存在を法的に確定させる必要があります。もしその手続きが取られていなければ、大学費用の請求自体は法的には成立しうることになります。
52万円の大学入学費用は妥当か?
国公立大学の場合、入学金は約28万円、授業料は年間約54万円で、初年度に必要な金額は80万円前後が一般的です。私立文系の場合は初年度で100~150万円程度かかることもあり、52万円の請求が「非常識」とまでは言えません。
ただし、費用の内訳や奨学金でどの程度補填されているかによって、負担額の妥当性は変わります。請求内容が曖昧であったり、他の費用と混同されている場合には、明確な根拠を求めることが重要です。
費用負担を拒否するための具体的な対応
以下のような状況であれば、費用の支払いを拒否または減額できる可能性があります。
- 進学について事前に相談が一切なかった
- 子との関係が極めて悪く、扶養義務を果たすことが困難である
- 奨学金により費用が十分に賄われている
- 実子でない可能性が極めて高く、今後裁判で否認する予定がある
これらを根拠に、家庭裁判所の調停や審判において自分の立場を丁寧に説明することが大切です。必要に応じて弁護士と連携し、証拠書類(出生届や奨学金契約書など)を準備しましょう。
まとめ:請求の正当性は関係性・通知の有無・奨学金の状況で変わる
大学費用の請求に対して支払う義務があるかどうかは、子との親子関係、進学に関する事前通知の有無、奨学金の利用状況など、多くの要素に左右されます。特に、実子でない可能性がある場合や、親として一切関与していない進学に対する請求は、法的に争う余地があると考えられます。
不明瞭な請求や納得のいかない内容に対しては、弁護士のアドバイスを受けながら慎重に対応し、自分の立場を守る行動が重要です。