職場などで「どこの国の人ですか?」と聞かれたり、日本語の違和感を指摘されたことで、深く傷ついたという経験を持つ方は少なくありません。こうした発言は名誉毀損や差別に該当するのか、また法的な対応は可能なのかについて、実務的観点から詳しく解説します。
「どこの国の人?」という発言は名誉毀損になるのか?
名誉毀損罪(刑法第230条)は、「公然と事実を摘示して、人の社会的評価を低下させた場合」に成立します。「どこの国の人ですか?」という質問自体は、一般的には名誉を毀損する事実の摘示に該当しないため、単独では名誉毀損にはならない可能性が高いです。
ただし、文脈や発言の意図によっては、差別的意図や人格否定と受け取られることもあり、侮辱罪やパワハラ(労働法上の問題)として取り上げられるケースがあります。
侮辱罪やハラスメントの可能性
侮辱罪(刑法第231条)は、具体的な事実を述べなくても、人格や人間性を否定するような発言により相手の名誉感情を害した場合に成立します。
たとえば、職場内で「日本人っぽくないね」や「日本語が変」といった発言を繰り返し受けている場合、人格を否定する意図と捉えられ、侮辱行為と認定される余地があります。
職場での差別的発言はハラスメントに該当するか
職場における発言が差別的または無神経なものである場合、それが継続して行われている、もしくは明らかに精神的苦痛を与えている場合は、パワーハラスメントやモラルハラスメントに該当します。
会社の就業規則やコンプライアンスの観点からも問題があるとされ、内部通報や人事部への相談の対象になります。
法的な証明と対応のステップ
実際に法的な対応を検討する場合には、以下のような準備が必要です。
- 発言があった日時と状況を記録
- 第三者の証言(同僚など)
- 録音・メモなどの証拠
これらがあることで、法務局への人権相談や弁護士による助言も具体的になります。
名誉毀損以外の選択肢:民事訴訟や労働問題での対応
仮に刑事事件としての立件が難しくても、民事での慰謝料請求や、会社に対する安全配慮義務違反を問う労働審判なども考えられます。
また、自治体や法テラスなどの無料相談を活用することで、初期対応の指針が得られます。
まとめ:法的には名誉毀損よりも侮辱やハラスメントでの対応が現実的
「どこの国の人?」という発言が、名誉毀損になる可能性は低いですが、侮辱罪やハラスメントとして対応する道は残されています。
精神的苦痛を感じた際は、感情だけで終わらせず、証拠を残し、必要に応じて第三者機関に相談することで、自分自身を守る一歩につながります。