養育費の支払い義務と逃れられない現実|逃げ得は成立するのか?

離婚後の養育費不払いは、日本における大きな社会課題のひとつです。「逃げ切る」という言葉に反応する人もいますが、法的には養育費の支払い義務は極めて強く、その不履行には重大な責任が伴います。本記事では、養育費の法的な仕組み、不払いのリスク、回収の手段などを実例とともに解説します。

養育費の支払い義務とは?

養育費は親権を持たない親が、子どもの生活を支えるために支払う法的義務です。民法第766条に基づき、養育費の金額や期間は協議または調停・裁判によって定められます。支払い期間は基本的に子が成人(原則18歳)または大学卒業程度(22歳前後)までとされることが多いです。

養育費は子どもの権利であり、支払い義務者(非監護親)の意思によって勝手に放棄することはできません。

「逃げ切り」は本当に可能なのか?

過去には住所不明や無職を装うことで一時的に逃れていた事例もありました。しかし、近年はマイナンバー制度や給与差押え制度の整備が進み、逃げ得は事実上困難になっています

例えば、2020年の法改正により、養育費に関する履行確保制度が強化され、裁判所の調停・審判・和解調書などがあれば、給与・預金・不動産に対する差押えが可能になっています。

養育費を支払わない場合のリスク

養育費を支払わない場合、以下のようなリスクがあります。

  • 給与差押え(勤務先への通知)
  • 預金口座の凍結・差押え
  • 強制執行による資産回収
  • 信用情報への悪影響
  • 公的支援(児童扶養手当)の減額要因

特に給与差押えは、勤務先に通知されるため社会的信用を失う可能性が高いです。

養育費を回収するための具体的な方法

養育費の回収を目的とする場合、以下の流れが一般的です。

  1. 家庭裁判所で調停・審判を得る
  2. 確定した文書(調停調書・審判書)を取得する
  3. 相手の勤務先や資産を特定する
  4. 地方裁判所に強制執行(差押え)を申し立てる

最近では、自治体が養育費確保支援を行っているケースもありますので、各市区町村に相談することも有効です。

不払い事例とその末路

例えば、元夫が「無職だ」と主張して養育費の支払いを拒んでいたケースでは、家裁での履行勧告を経て、銀行口座と給与が差押えられました。さらに、勤務先にも知られて職を失った事例もあります。

また別のケースでは、養育費の調停後に支払いがなされなかったため、元妻が探偵を使って住所を特定し、給与差押えを行い、未払い分の一括回収に成功しています。

まとめ:養育費は「逃げ切れるもの」ではない

養育費の支払い義務は子どもの生活に直結する重大な法的責任です。一時的に逃れられたように見えても、証拠があれば何年後でも差押えは可能です。「逃げ得」は現代社会において成立しにくくなっています。

支払いが困難な場合でも、家庭裁判所での減額申し立てや支払い計画の相談など、正当な方法で解決する手段があります。責任を果たすことが、最終的には自分自身の人生の信用や安定にもつながります。

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