昭和の銀貨を溶かしてインゴット化するのは違法?法律と実務上のリスクを徹底解説

昭和32年〜41年に発行された100円銀貨、通称「鳳凰・稲・東京五輪銀貨」は現在でも一部で収集・売買されています。これらの銀貨は銀含有量が高いため、溶かしてインゴットに加工しようと考える人もいるかもしれません。しかし、この行為が法律に触れる可能性はあるのでしょうか?この記事では、刑法や貨幣損傷等取締法などの法的観点、そして実務上のリスクを詳しく解説します。

銀貨を溶かす行為は法律に違反するのか?

昭和の100円銀貨は、現在は法定通貨(通用力のある貨幣)としての使用は停止されています。ただし、貨幣損傷等取締法により、「貨幣を損傷し、もしくは鋳潰した者は科料に処せられる」と定められています。したがって、通貨の状態を意図的に破壊する(溶かす)行為は法律に違反する可能性があります。

なお、銀貨の「収集目的の売買」や「装飾品への加工」などは黙認されているケースも多いですが、「金属価目的での鋳潰し(インゴット化)」は明確に損傷行為に該当し得るため、法的リスクを伴います。

刑法における位置づけと属人主義の適用

仮に海外で銀貨を鋳潰した場合でも、「刑法の属人主義」によって日本人が国外で行った違法行為が国内法により罰せられることがあります。貨幣損傷等取締法は刑法の一部ではありませんが、行政罰や財務省の見解によって、取り締まりの対象になる可能性は否定できません。

たとえば、海外業者に依頼して鋳潰し、国内にインゴットとして持ち込む場合でも、貨幣損傷の意図や証拠があると判断されれば法的問題になる恐れがあります。

溶かしてもバレない?実務上のリスクと現状

実際には昭和の銀貨が市場でインゴットとして流通している例もあり、法的にグレーゾーンとされる場面も少なくありません。しかし、それは「黙認」であり、明確に合法とされているわけではありません。

  • 金融機関への持ち込みや売買時にトレース可能:元貨幣由来のインゴットであることが判明すれば、トラブルの原因となり得ます。
  • 銀貨のコレクター市場の価値を損なう可能性:一部の銀貨は希少価値があるため、むしろそのまま所持・売却した方が高値で取引されることも。

つまり、「バレなければ大丈夫」ではなく、「バレるリスク」と「失うメリット」を十分に天秤にかける必要があるということです。

合法的な方法で銀貨を活用するには

銀貨を溶かさずに資産化する手段としては、以下のような方法があります。

  • 銀貨専門業者に査定を依頼し、コレクター市場で売却する
  • アクセサリーや記念品として加工する(損傷しない範囲)
  • 投資対象として保管し、長期的な値上がりを待つ

たとえば、「東京五輪100円銀貨」は状態次第では1枚500円〜1,000円以上で取引されることもあり、銀の地金価値以上のプレミアがつく場合もあります。

まとめ:昭和の銀貨は文化財的価値も考慮すべき

100円銀貨を溶かしてインゴット化する行為は、明確に法律違反のリスクを伴います。特に「貨幣損傷等取締法」に抵触する可能性があり、海外で行った場合でも属人主義により日本国内で処罰対象となる可能性もあります。

銀貨の価値は「金属」ではなく「貨幣」としての文化的・歴史的側面にもあるため、軽率な加工は避け、合法的な活用方法を検討するのが賢明です。

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