近年、公人の経歴に関する問題が注目を集める中、伊東市の田久保市長の大学除籍とその説明に関する報道が話題となりました。本記事では、大学からの除籍に関する一般的な手続きや通知の仕組みについて解説しつつ、今回のケースが示唆する問題点を検証します。
大学の「除籍」とはどういう意味か
大学における「除籍」とは、学費の未納や学業成績不振、長期欠席などを理由に大学から籍を失う手続きを指します。「退学」と違い、本人の意思とは関係なく大学側が判断して決定することが多く、その際には学籍簿からの抹消が行われます。
除籍となった場合、学歴上は「中退」と表記されることがあり、「卒業」と明記することは虚偽にあたる可能性があります。
除籍通知は本人に届くのか?保証人にも通知されるのか?
多くの大学では、除籍処分の決定前に本人宛に通知が行われ、場合によっては保証人(保護者)にも同様の通知が送付されます。これは大学の規程や個人情報保護方針により異なりますが、特に学費未納などが理由である場合には、保証人に対する督促や除籍の通知も含まれるケースが一般的です。
一方、通知があっても見落としたり、保証人が伝えなかったという可能性もゼロではありません。特に住所変更や家族関係の断絶などがある場合には、情報伝達が滞るリスクがあります。
田久保市長の「卒業したと思っていた」は成立するのか
報道によると、田久保市長は当初「卒業したと思っていた」と発言し、のちに「除籍となっていたことを後に知った」と説明しています。しかし、除籍通知が行われていたとすれば、その主張には疑問が残ります。
仮に除籍通知が保証人のみに届いていた場合でも、その内容を本人が知らないままというのは、やや現実性に欠けるとの指摘もあります。報道でも大学側は「手続き上、通知をしていたはず」とコメントしており、責任の所在が問われるのは避けられないでしょう。
経歴詐称・公文書偽造の法的リスク
経歴を詐称し、それが選挙公報などに記載された場合、「公職選挙法」や「虚偽公文書作成罪」などに抵触する可能性があります。ただし、本人に明確な虚偽の意図がなかったことが証明されれば、法的責任を問われることは難しいケースもあります。
今回のケースでは、本人の認識と実際の学歴に齟齬があること自体が問題視されており、法的な判断は慎重に行われる必要があります。
まとめ:除籍の通知は「されるべき」であり、責任の所在は慎重に見極めるべき
大学の除籍通知は、基本的には本人および保証人に届けられる制度設計がされています。しかし、通知が確実に伝わったかどうか、本人が正しく認識していたかどうかは、ケースバイケースで判断される必要があります。
田久保市長の件を通して、公人が自身の経歴についてより正確かつ透明な説明を行う必要があること、そして公文書への記載の重要性についてあらためて考える契機となるでしょう。
なお、詳細は報道記事をご確認ください。[参照]