自分の車の周りをうろついていた不審者に声をかけたところ、逃げられたため追いかけた結果、暴行を受けて負傷。しかし、警察に相談すると今度は「相手も怪我をしている」として、まさかの加害者扱い。こうしたケース、納得いかない方も多いでしょう。本記事では、正当防衛・傷害事件・被疑者化の流れ・えん罪リスクについて、法律的な観点から詳しく解説します。
追跡した側も「加害者」になるのか?法的な立場
刑法上、被害者であっても「相手に物理的接触を仕掛けた」と見なされれば、被疑者として捜査対象になる可能性があります。今回のように「声かけ→逃走→追跡→暴行される」という流れでも、追跡が過剰と判断されれば、双方の傷害事件として処理されるケースがあります。
たとえば、相手が「恐怖を感じた」と証言すれば、「威圧的に追いかけられた」と解釈される余地もあるため、法的には中立的に扱われやすいのです。
正当防衛は成立する?成立条件と注意点
刑法第36条によれば、正当防衛が認められるには以下の3条件が必要です。
- 急迫不正の侵害がある
- 自己または他人の権利を守る意思
- 防衛のためにやむを得ず行った行為である
本件では、相手から暴行を受けた時点で防衛の意思を持ち反撃していれば、正当防衛が成立する可能性があります。ただし「追いかけた」行動が挑発とみなされると、正当防衛が否定されることも。
診断書と被害届の効果は?えん罪防止の証拠になるか
被害者としての立場を明確にするために重要なのが、医師による診断書です。これは警察に傷害事件として届け出る際の重要な証拠となります。
同時に、防犯カメラ映像・通話履歴・目撃証言なども可能であれば提出しましょう。これらがあることで「やられ損」ではなく、自身の正当性を客観的に主張できます。
警察の対応に納得できないときの選択肢
警察が「双方から事情を聞く」というスタンスを取るのは珍しくありません。しかし、明らかにこちらが一方的に暴行されたのに、相手の証言だけで「お互い様」とされることもあります。
そんなときは、公安委員会や消費者生活センター、法テラスなどへの相談を検討してください。第三者機関に相談することで、公平性が保たれるケースも多くあります。
実際に起きた似たケースと判例
過去の判例では、「不審者に声をかけた→逃走→追跡→暴行→訴えられた」事例が実際に存在し、双方が不起訴処分になった例があります。
これは、「正当性の主張が相殺」されたことによる結果であり、必ずしも被害者が不利になるとは限りません。反対に、冷静に行動して記録や証拠を揃えた人が、不起訴どころか損害賠償を勝ち取ったケースもあります。
まとめ:やられ損を防ぐために、取るべき行動
法的には「一方的な被害者」として扱われるためには、感情的な追跡や対峙ではなく、証拠の収集と冷静な対応が非常に重要です。
相手の挑発に乗ってしまうと、正当防衛が否定されるどころか、思わぬ形で「被疑者」として扱われることもあり得ます。万一の際には、法テラス・弁護士相談を活用して、えん罪を防ぎましょう。