教員を退職後も、かつての元生徒からの理不尽な言動に苦しめられるケースが実際に存在します。SNSでの実名公開や勤務先への突撃、内容証明での面会要求など、名誉や安全を脅かされるような行為にどう対処すべきか。法的観点・専門家の知見から具体的に整理します。
元生徒によるSNS発信と名誉毀損の可能性
元生徒がX(旧Twitter)やnoteなどSNS上で、元教員の氏名・所属・過去の体罰と称する行為などを公表した場合、それが虚偽であるならば名誉毀損罪(刑法230条)に該当する可能性があります。
たとえ事実であったとしても、公共性・公益目的・真実性の3要件を満たさなければ違法と判断されることもあり、誤解や思い込みによる投稿でも責任を問える場合があります。
内容証明郵便は「義務」ではない
内容証明郵便はあくまで「通知の証拠を残すための手段」であり、受け取った側が返答や面会をする法的義務は一切ありません。
むしろ、執拗に面会や謝罪を迫る行為が続けば、次のような法的リスクに発展します。
- 脅迫罪(刑法222条)
- 強要罪(刑法223条)
- ストーカー規制法(平成12年法律第81号)
「逃げれば立場が悪くなる」との発言も、内容次第では恫喝とみなされます。
警察・弁護士への相談は有効か
次のような場合は、速やかに警察・弁護士への相談を検討すべきです。
- 執拗な接触や待ち伏せ、突撃訪問などの「面会強要」
- 勤務先を巻き込むような圧力(電話、郵送、来訪)
- SNSでの誹謗中傷や名誉を傷つける投稿の継続
警察には「ストーカー相談」「名誉毀損相談」「業務妨害」などの窓口があり、自治体によっては専門窓口や精神保健福祉センターとも連携しています。
また、弁護士を通じて「警告書」を送ることで相手の行動がピタリと止まることも多く、代理人による対応は非常に効果的です。
証拠の保存と記録が最優先
今後の対処のために、相手の発言・書面・SNS投稿などは必ず保存してください。以下の形式が有効です。
- SNS投稿のスクリーンショット(日時・URL付き)
- 音声記録(来訪時の録音)
- 送付された郵便物の開封・封筒ごとのスキャン
- 第三者(学校職員等)の証言メモ
これらは後に民事訴訟・刑事告訴・警察相談の際に非常に有効な証拠となります。
学校側の対応と守るべき配慮
学校の管理職・事務職員とも連携を取り、以下の対応を依頼しましょう。
- 元生徒からの電話・訪問は本人には絶対に取り次がない
- 本人が退勤済み・不在などと柔らかく伝える
- 再来訪があった場合の対応マニュアルを作成する
また、学校宛ての手紙等が届いた場合は、全件本人に転送せず、弁護士確認を通す体制が望ましいです。
まとめ
元生徒からの実名公開・誹謗中傷・執拗な接触は、名誉毀損・ストーカー行為・業務妨害に該当する可能性があります。
・内容証明に回答義務はない
・身に覚えのない内容であれば無視して問題なし
・警察・弁護士への相談で法的対処を進める
・SNSや郵便物などの証拠保存が重要
教育関係者が安心して第二のキャリアを築くためにも、冷静に、しかし毅然と対処していきましょう。