親の遺産分割において、相続人の一人が遺産を隠しているのではないかという不信感を抱くケースは少なくありません。この記事では、遺産隠しに関する具体的な対応方法や、取引履歴の開示請求を弁護士に依頼した場合の流れ・費用について詳しく解説します。
遺産隠しとは何か?
遺産隠しとは、相続人の一人または一部が他の相続人に対し、遺産の一部を故意に知らせず、申告・分割を避けて自分の利益を図る行為です。特に故人の預金口座や不動産などの財産情報が相続人に完全に共有されていないと、こうしたトラブルが起こりやすくなります。
被相続人の生前の発言や家族内で共有されていた財産の存在と、実際の遺産総額が大きく異なる場合には、遺産隠しの可能性が疑われます。
取引履歴の開示請求とは
被相続人の預金通帳や銀行口座の履歴は、相続人であれば金融機関に対して開示請求を行うことが可能です。弁護士を通して正式に請求することで、過去10年分程度の取引明細を入手できます。
この請求は被相続人の死亡証明書や相続人であることを証明する戸籍謄本等が必要であり、弁護士に依頼すれば確実かつ迅速に手続きを進められます。
開示請求をしたことは他の相続人に知られるのか?
基本的に、金融機関に対して取引履歴を請求した事実が他の相続人に通知されることはありません。開示請求は相続人それぞれに認められた権利であり、事前の合意や同意は不要です。
ただし、その後に開示内容を基に遺産分割協議の見直しや調停、審判などを申し立てる場合には、他の相続人に知られることになります。
弁護士への依頼費用の目安
遺産調査を弁護士に依頼した場合の費用は、依頼内容や弁護士の報酬基準によって異なりますが、一般的な目安は以下の通りです。
- 相談料:30分あたり5,000円〜10,000円
- 調査依頼(銀行調査など):1件あたり3万〜5万円程度
- 着手金(調停や訴訟に進む場合):10万〜30万円程度
実際には、複数の金融機関に問い合わせを行う場合や、不動産登記調査なども必要になると費用が増える可能性があります。見積もりを事前に提示してもらうことが大切です。
証拠が得られた場合の今後の対応
不審な資金の動きや遺産隠しの事実が明らかになった場合、調停や家庭裁判所での審判を通じて、分割のやり直しや損害賠償請求が可能になります。特に相続人が故意に財産を隠したと判断される場合には「特別受益」や「寄与分」などを巡る争いが生じることもあります。
調停前の段階で証拠を集め、適切に主張を組み立てておくことが有利に働きます。
まとめ
遺産隠しの疑いがある場合、取引履歴の開示請求は有効な第一歩です。弁護士への依頼により、より正確かつ法的根拠に基づいた調査が可能になります。費用は発生しますが、後々のトラブル回避や公正な相続のためには十分に価値のある手段です。
少しでも不審な点を感じたら、早めに専門家に相談し、冷静かつ着実に対処することをおすすめします。