遺言書が法定相続分を侵害した場合の対応とは?遺留分と請求のポイントを解説

被相続人が残した正式な遺言書により、ある相続人の法定相続分が大幅に減らされた、あるいは完全に排除されたというケースは少なくありません。本記事では、そうした場面での正しい対応法や、遺留分の請求方法について詳しく解説します。

▼法定相続分と遺言書の効力の基本

日本の相続制度では、被相続人が遺言書で遺産の配分を自由に決めることが原則として認められています。そのため、法定相続人が必ずしも法律に定められた割合で財産を受け取れるとは限りません。

ただし、一定の法定相続人には「遺留分」という最低限の取り分が保障されており、遺言書によってそれが侵害された場合には「遺留分侵害額請求権」を行使することが可能です。

▼遺留分とは?誰にどれだけ保障されているか

遺留分の権利があるのは、配偶者・子(代襲相続人含む)・直系尊属です。兄弟姉妹には遺留分の権利はありません。

遺留分の割合は、原則として以下の通りです。

  • 直系尊属のみが相続人の場合:法定相続分の1/3
  • その他(子や配偶者がいる場合):法定相続分の1/2

たとえば、子どもが2人いて、1人に全財産を与えるという遺言があった場合、もう1人の子は遺留分(全体の1/4)を請求できます。

▼遺留分侵害額請求の方法と手続き

遺留分が侵害されたと判断した場合、以下の手続きが必要です。

  1. 内容証明郵便による請求通知を行う(証拠確保のため)
  2. 請求期限:相続開始と侵害を知った時から1年以内、または相続開始から10年以内
  3. 当事者間で解決しない場合は家庭裁判所へ調停申立てまたは訴訟を提起

※請求できるのは「金銭」に限られ、物理的な遺産の返還請求ではない点に注意しましょう。

▼実際にあった事例とその判断

例1:父が遺言で全財産を後妻に相続させると明記。実子が家庭裁判所に遺留分侵害請求を行い、調停で遺留分(財産の1/4)に相当する金額の支払いで和解。

例2:兄に全てを相続させる遺言に対し、妹が遺留分請求をしたが、相続開始から1年2ヶ月経過していたため、時効として却下。

▼遺言と相続対策のバランス

被相続人が思い通りの相続を実現したい場合でも、遺留分を考慮しないと後のトラブルにつながります。

弁護士や司法書士と連携して、遺言書作成時に遺留分に配慮した内容にしたり、予め相続人と話し合っておくことが、紛争回避には有効です。

まとめ

正規の遺言書があっても、一定の相続人には法律上の遺留分が認められており、それを侵害した遺言には請求によって修正が可能です。

相続トラブルを防ぐには、遺言作成と同時に遺留分への理解と事前の調整が不可欠です。専門家への早期相談が安心・円満な相続の鍵となります。

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