交通事故で骨折などの大きなケガを負った場合、「診断書に記載される全治日数は意外と短い」という話を耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。特に行政処分や加点の基準に関わると言われる診断書の記載内容については誤解も多い分野です。この記事では、実際の医療現場や交通事故対応の実務に即して、全治日数の扱いや背景を詳しく解説します。
診断書の「全治日数」とは何を指すのか
医師が発行する診断書に記載される「全治〇日」とは、医学的な観点から治癒までに要すると見込まれる期間を示します。これは必ずしも入院や治療の必要日数と一致するわけではなく、また社会復帰や仕事への復帰が可能かどうかとは別物です。
たとえば骨折の場合、完治までに3ヶ月以上かかることも多いですが、診断書には「全治30日」や「全治45日」など比較的短めに記載されることもあります。
診断書の日数はなぜ短めに書かれるのか
一部で「警察への提出や行政処分を軽くするために医師が短めに記載する」との噂もありますが、実際は医師が自身の医学的判断に基づいて記載していることがほとんどです。法律や警察からの要請で日数を調整することはありません。
ただし、初診時には症状が確定しづらいため、「まず30日」として、後日症状の悪化や通院の長期化があれば「加療期間延長」の診断書を追加発行するケースもよくあります。
行政処分や刑事処分への影響
交通事故でケガを負わせた加害者に対する行政処分(免許の点数加算や停止)は、被害者の全治日数によって変動します。具体的には以下のような基準があります。
全治日数 | 加点 | 免許停止等 |
---|---|---|
15日未満 | 0点 | なし |
15日以上30日未満 | 3点 | 停止なし |
30日以上 | 6点 | 免許停止あり |
3ヶ月以上 | 13点 | 90日停止~取り消し |
このように、行政処分に関わるため、被害者側や加害者側が「診断書の日数」に敏感になるのは事実です。ただし、医師が意図的に操作することは稀で、あくまで診察に基づいて決められます。
保険会社とのやり取りにも影響する
自賠責保険や任意保険での賠償金の支払いにも「全治日数」は重要です。通院期間や後遺障害認定との関係で、診断書が短いと治療費や慰謝料が低くなる可能性があります。
ただし、日数が短くても診断書の内容+通院実績+症状の経過が整っていれば、保険会社が柔軟に対応することもあります。
実例:骨折でも「全治30日」?
たとえば、肋骨のひびや指の骨折などは、日常生活への支障は大きくないため、医師が「全治2~4週間」と診断することもあります。逆に、下肢の骨折で歩行困難な場合には「全治2~3ヶ月」となることもあります。
また、加害者側から「なるべく軽く書いてほしい」と要望されても、医師がそれに従う義務は一切ありません。診断は医師の独立した医療行為です。
まとめ
交通事故における診断書の全治日数は、医師の医学的判断によって決まるもので、加害者の処分や被害者の補償に間接的に影響します。
「3ヶ月以上の全治はめったに書かれない」という噂には一理ありますが、それは症状の初期判断や証拠性に配慮した結果である場合が多いです。後からの追記や再診断も可能なため、気になる点は主治医と相談するのがベストです。