交通事故によるケガで通院が長期化した場合、保険会社との交渉や補償額の算出にはさまざまな要素が関わります。とくに過失割合が発生するケースや、自身の加入している人身傷害保険を併用する場合、最終的に受け取れる金額は複雑になりがちです。今回は弁護士特約を利用した例をもとに、実際の補償金額の内訳や考え方を解説します。
事故の基本状況と補償の枠組み
本件は駐車場内で発生した自動車同士の人身事故で、過失割合が相手:自身=6:4と設定されているケースです。受傷内容は頚椎捻挫で、リハビリ通院が5か月間行われ、保険会社による治療費支払いの打ち切り後は、人身傷害保険によって継続されました。
ポイントとなるのは次の3点です。
- 加害者側の自賠責・任意保険から支払われる補償
- 自己加入の人身傷害保険からの補償
- 弁護士基準による慰謝料計算
弁護士基準での慰謝料計算と過失割合の反映
弁護士基準とは、実際に裁判で認められる水準を参考にした慰謝料などの算出基準であり、保険会社提示額よりも高額になることが一般的です。例えば、通院期間3か月(実通院日数に基づく)の慰謝料相場は約53万円とされます。
これに対して、6:4の過失割合が適用されると、相手方からの補償は「53万円 × 0.6 = 31万8000円」となります。この計算は正しい前提に基づいた見積もりであり、実際にもこのような形で支払われることが多いです。
人身傷害保険での追加通院分の補償
相手方の保険会社による支払い打ち切り後、自己加入の人身傷害保険を使って残り2か月の通院をカバーした場合、この部分には過失割合の影響はありません。人身傷害保険は契約者本人に過失があっても、損害を100%補償するのが特徴です。
慰謝料相場として、2か月分=36万円程度の計算も弁護士基準に基づくものであり、おおよそ妥当です。したがって、「相手保険分31.8万円+人身傷害保険36万円=合計67.8万円」の計算は正確に近いものと言えるでしょう。
その他に考慮すべき費目とは?
今回の計算は慰謝料のみの想定に近いため、実際の損害賠償では以下のような項目も検討の対象となります。
- 通院交通費(バス・電車・タクシー代)
- 休業損害(仕事を休んだ場合の収入補填)
- 治療実費(保険外の施術など)
- 後遺障害が認定された場合の等級慰謝料・逸失利益
これらは通院記録や診断書、収入証明などをもとに、弁護士と相談して請求範囲に加えることが可能です。
弁護士特約を活用するメリット
本件のように弁護士特約を使っている場合、法律上の交渉や保険会社とのやり取り、慰謝料の請求などを専門家に任せられるため、精神的・手続き的な負担を軽減できます。
特に、「過失割合に不満がある」「提示額が低い」といった場面では、弁護士が介入することで数十万円以上の差が出ることも少なくありません。弁護士費用も特約でカバーされるため、金銭的負担なく依頼できるのが大きな利点です。
まとめ:今回の補償金額はおおむね妥当な水準
駐車場での事故による5か月通院に対して、「相手保険からの31.8万円+人身傷害保険からの36万円=合計67.8万円」という計算は、弁護士基準に沿っており、十分妥当な内容です。
通院内容や通院日数によって若干の変動はあるものの、大きな誤差はありません。心配な場合は、弁護士に改めて計算根拠を尋ね、納得できる形で示談に臨むのが安心です。