突然の事故に遭遇し、当初は軽症と思っていたものの、後日になって体調に異変が出る――交通事故では決して珍しいことではありません。特に自転車と自動車の事故では、判断に迷うポイントが多く、「物損事故か人身事故か」の選択はその後の補償や通院にも影響します。本記事では、頚椎捻挫などのケガが発覚した場合に、どのような判断が必要かを丁寧に解説します。
物損事故と人身事故の違いとは?
交通事故は大きく分けて「物損事故」と「人身事故」の2種類に分類されます。物損事故は車や自転車など物に対する損害のみの場合で、人がケガをした場合には人身事故に切り替える必要があります。
ポイントは、「医師の診断があり、ケガが認められるかどうか」です。たとえ軽い打撲や擦り傷でも、診断書が出ていれば人身事故として届け出が可能です。
頚椎捻挫の診断が出たら人身事故扱いが基本
頚椎捻挫(いわゆるムチウチ)は、交通事故による衝撃で起きやすい典型的な傷病です。事故直後には痛みが少なくても、時間が経ってから症状が出ることも多く、翌日以降に首の痛みや腕のしびれ、筋力低下が現れるケースもあります。
このような症状がある場合、物損事故のままでは通院費や慰謝料などの補償が受けられない可能性があります。したがって、人身事故として警察に届け出を変更することが望ましい対応です。
物損事故から人身事故への切り替えは可能?
事故当日に物損事故として届け出た場合でも、後日病院で診断を受けた結果、人身事故へ切り替えることは可能です。必要な手続きは以下の通りです。
- 病院で診断書を発行してもらう
- 事故を担当した警察署に連絡し、診断書を提出
- 警察署で人身事故の手続きを行う
ただし、事故から一定期間(原則として15日程度)を過ぎてしまうと受理されない可能性があるため、症状が出た時点で速やかに動くことが重要です。
自転車側にも過失がある場合の影響
今回のように傘を差しながらの自転車運転は、道路交通法で禁止されている「片手運転」と見なされ、過失割合が問われる可能性があります。ただし、事故の状況によっては相手車両の責任が大きい場合もあるため、一概に全責任が自転車側にあるとは限りません。
人身事故に切り替えることで、自分にも何らかの違反点数や罰則が課される可能性はありますが、それよりも「医療費や通院補償を確保することの方が重要」です。
示談や補償に関わる影響とは
物損事故では原則として治療費や慰謝料、休業損害などの人身損害に対する補償は対象外となります。一方、人身事故として処理されていれば、加害者側の保険会社がそれらをカバーするため、被害者は経済的な負担なく治療に専念できます。
また、後遺障害が残った場合にも、人身事故でなければ補償請求が極めて困難となります。早い段階で正しい処理に切り替えることで、将来のリスクを回避することができます。
まとめ:状況が変わったら、迷わず人身事故へ切り替えを
事故後に体調が変化した場合や、診断書でケガが確認された場合は、物損事故から人身事故への切り替えを速やかに行いましょう。たとえ自転車側に一定の過失があるとしても、正当な補償を受けるための権利は守られています。
事故の相手が誠実であっても、書類上きちんとした手続きを行わなければ保険の適用外になる可能性もあるため、冷静に対応することが大切です。困った場合には、交通事故に詳しい弁護士や法テラスへの相談も有効です。