離婚時における公正証書の作成は、将来のトラブル防止において非常に重要な手続きです。特に養育費や財産分与といった金銭面に関わる取り決めは、形式が正確でないと法的拘束力が弱まり、支払いが滞った際の強制執行に支障が出ることもあります。本記事では、公正証書を弁護士に依頼するべきかどうかの判断基準とそのメリットをわかりやすく解説します。
公正証書とは?離婚時に作成する目的
公正証書とは、公証人が法律に基づいて作成する公式な文書で、契約や合意の内容を証明する強い証拠力を持ちます。離婚時には主に以下の内容を盛り込みます。
- 養育費の金額・支払期間・支払方法
- 面会交流の条件
- 財産分与・慰謝料の支払い条件
- 強制執行認諾文言(支払いが滞った際に差押えが可能)
このような文書は、口頭での合意とは異なり法的に強い効力を発揮します。
弁護士に依頼する3つの大きなメリット
弁護士に依頼しなくても公正証書を作成することは可能ですが、以下のようなメリットがあります。
- 1. 文言の正確性と将来的な有効性の担保
公証役場は当事者の合意があれば作成しますが、文言の法的妥当性まではチェックしません。弁護士が入ることで「後々の解釈トラブル」が回避されやすくなります。 - 2. 高額な養育費などの取り決めでも対応しやすい
相場より高額な養育費は、将来的に相手から減額請求を受けやすくなります。こうしたケースでは支払い義務の根拠や背景も文書に残しておく必要があり、その点でも弁護士の知見が活きます。 - 3. 弁護士が交渉・証拠保全を行う安心感
弁護士が関与していれば、後のトラブル時に「第三者が関与した記録」があることで、訴訟や強制執行にもスムーズに移行しやすくなります。
弁護士に依頼しない場合の注意点
当事者だけで公正証書を作成する際には、以下のリスクがあります。
- 曖昧な文言によって支払い義務を逃れられる可能性
- 経済状況の変化による支払い減額の余地を残してしまう
- 将来的な証明書類の不足
また、合意内容が「著しく不合理」と判断されると、裁判所が減額を認めるケースもあります。高額な養育費のように一見有利に見える条件も、法的観点での精査が重要です。
弁護士は公正証書を保管する?
弁護士が関与していても、基本的に原本は公証役場が保管し、依頼者や代理人には写し(正本または謄本)が交付されます。弁護士が写しを保管してくれるケースもありますが、それは任意であり、明確に依頼する必要があります。
したがって、自分自身でも写しを大切に保管し、万が一のためにPDF化してクラウド保存しておくのもおすすめです。
費用と依頼のタイミングについて
弁護士に依頼する際の費用はケースによりますが、10万円〜30万円程度が相場です。高額に感じるかもしれませんが、将来のトラブル回避や差押えにかかる手間・費用を考えると、十分に見合う出費といえるでしょう。
内容に合意している状態でも、「最終版のチェック段階だけ」弁護士にスポットで依頼する方法もあります。必要最低限の費用で法的リスクを回避する手段として有効です。
まとめ:合意済みでも弁護士の関与で将来の安心を
離婚協議が円満であっても、公正証書に不備があれば将来のトラブルを防げません。弁護士を介入させることで、文言の精度・強制執行力の強化・証拠保全の安心感を得ることができます。特に高額な養育費を取り決める場合には、法的リスクの回避のためにも専門家の関与を検討しましょう。