信号待ち中に後続車から追突され、その勢いで前の車にもぶつかってしまった——いわゆる“玉突き事故”で中間にいた車の過失はどうなるのでしょうか。被害者であるにも関わらず、自分にも責任が生じる可能性があるというのは納得しがたいもの。本記事では、法的な過失割合の考え方や具体的なケーススタディを通じて、この複雑な問題をわかりやすく解説します。
玉突き事故とは?基本構造を整理しよう
玉突き事故とは、主に複数台の車が直列に停止・走行中、後方車の追突により前方車が次々と衝突する多重事故を指します。一般的な構成は、先頭車(1台目)、中間車(2台目)、後方車(3台目)の3台構成です。
中間車は“ぶつけられた側”でもあり“ぶつけた側”でもあるため、加害者と被害者の両方の立場となるケースがあります。過失の判断はこの複雑な関係性を前提に行われます。
中間車に過失が問われるかどうかの分岐点
結論から言うと、通常、中間車がしっかり停車していたにもかかわらず後方車の追突で前車にぶつかった場合、中間車に過失は生じません。これは「回避不能な衝撃」であり、不可抗力とみなされるためです。
ただし、例外もあります。例えば。
- 中間車が停車しておらず、前方車に距離を詰めすぎていた
- 衝突の瞬間にブレーキを緩めていた
- すでに前車に衝突していた状態で後ろからぶつけられた
こうした場合には、中間車にも一定の過失(ごく軽微なことが多い)が認定される可能性があります。
過失割合の目安:中間車の立場での典型的パターン
過失割合の典型例としては以下のようなものがあります。
- 完全に停止中の中間車: 過失割合 0%(中間車に過失なし)
- 減速中だったが不完全な停車: 1〜2割程度の過失認定可能性あり
- 中間車が前方車に追突後、後方車から追突された: 主に中間車の過失(過失割合 7:3〜9:1で中間車の責任が重くなる)
状況や目撃証言、ドライブレコーダー映像などが判断材料になります。
証明責任とドライブレコーダーの重要性
自分に過失がないことを主張するには、「完全に停車していた」ことを示す証拠が極めて重要です。その中で最も有効なのがドライブレコーダーの映像です。
また、事故当時の状況をメモに残したり、第三者の目撃者の証言を確保することも効果的です。中間車にとっては“自分の無過失を証明する”姿勢が、最終的な補償範囲に直結します。
保険での対応:自車の任意保険はどう動く?
もし過失がゼロと認定されれば、自身の任意保険を使用せずに、後方車の対物賠償保険で前方車の補償もされるケースが一般的です。
一方で、自身にも微小な過失があるとされた場合は、事故割合に応じて保険会社が支払うことになり、自身の等級や保険料に影響が出ることも。事故状況の記録・主張は慎重に行いましょう。
まとめ:玉突き事故に巻き込まれても慌てず正しく対応を
信号待ち中に後続車に追突され、その反動で前方車に衝突してしまった場合、多くのケースで中間車に過失はありません。ただし、停車の有無や衝突順序によっては過失を問われることもあり得ます。事故直後の証拠確保と状況説明が、法的責任や保険対応を左右します。落ち着いて対応し、自身の過失を最小限に抑えるためにも、正しい知識を備えておきましょう。