アメリカの刑事裁判制度では、「有罪・無罪の判断(評決)」と「量刑(刑罰)の判断」が別々の日に行われるのが一般的です。この制度設計には、法的・手続的に明確な理由が存在します。この記事ではその背景と意味について詳しく解説します。
アメリカの刑事裁判における手続きの流れ
アメリカでは、刑事事件が裁判にかけられると、まず「有罪か無罪か」が陪審員によって審理・評決されます。これは「Guilt Phase(有罪フェーズ)」と呼ばれます。
その後、有罪となった場合に「量刑を決定する審理(Sentencing Phase)」が別途実施される仕組みです。このように2段階に分けることで、判断の公平性を担保しています。
なぜ別日に分けるのか?主な理由3つ
① 陪審員の中立性を保つため
量刑情報(例えば過去の前科や情状など)が有罪無罪の判断に影響を与えないよう、有罪判断には必要最低限の事実だけを審理対象にします。
② 情状酌量や証拠提出の幅を広げるため
量刑判断では、被告人の過去の行状、家族構成、反省の態度、被害者側の意見など、より多面的な事情が考慮されます。これらは量刑に関係しても、有罪判断には本来無関係です。
③ 法律上の要請
特に死刑や終身刑が関係する重大事件では、「有罪」「量刑」を完全に分けたプロセスを取ることが各州法・連邦法で義務付けられているケースもあります。
有名な判例に見る二段階手続きの実例
アメリカでは重大事件でこの手続きが頻繁に行われています。たとえば、死刑が争点となる事件では「有罪判決の数日〜数週間後」に、別途量刑審理が開かれ、被告・検察双方が追加証拠を提出し、量刑が決まります。
実際、連邦裁判所でも連続殺人犯やテロ関連事件でこの形式が多く採用されています。
日本との違い:なぜアメリカ方式が重視されるのか
日本では有罪・量刑が同時に判断されるのが基本です。一方でアメリカでは、被告人の権利保障や司法の透明性を重視する文化の中で、「偏見なき裁き」と「多角的な量刑判断」を両立するために、日程を分ける形式が根付いています。
とりわけ陪審制では、一般市民が判断に関わるため、慎重な手続きが求められます。
量刑判断で考慮されるポイント
- 被害者の被害状況・遺族の陳述
- 被告の反省の有無や謝罪
- 初犯か再犯か
- 弁護士による量刑軽減の嘆願
- 更生の見込みや社会的背景
このような要素をもとに、裁判官または量刑用陪審員が刑の重さを決定します。
まとめ:手続きの分離は「公正さ」と「慎重さ」を担保する仕組み
アメリカで有罪・量刑が別日に行われるのは、司法手続きにおける公正性と合理性を高めるための制度的工夫です。陪審員の中立性を保ち、被告人に対してより適切で個別事情に配慮した量刑が下されるように設計されているのです。