インターネット黎明期において、悪質なメールや架空請求に対して「対抗策」として電話番号を晒すなどの行為が一部ユーザー間で行われていました。今回のように、出会い系サイトへ番号を投稿するなどの行為は、20年以上前の出来事であっても、場合によっては法的責任が問われる可能性があるため、正確な理解が必要です。
「晒し行為」は名誉毀損や侮辱罪に該当するか?
たとえ相手が悪質な業者や架空請求を送ってきた人物であっても、相手の電話番号をインターネット上で晒す行為は、刑法230条の名誉毀損罪や231条の侮辱罪に該当する可能性があります。
特に、性的な文脈や出会い系サイトに番号を掲載するようなケースでは、社会的評価を不当に低下させる行為とみなされ、違法性が高くなります。相手が詐欺的業者であることは違法性を完全に否定する理由にはなりません。
プライバシー権侵害・不法行為としての民事責任
刑事上の責任にとどまらず、民法709条の不法行為責任が追及されることもあります。これは、他人の個人情報を無断で第三者に公開し、精神的損害や業務妨害を生じさせた場合に成立します。
仮に加害者が複数人(いわゆる「共謀」)であった場合は、連帯責任が認められるケースもあります。掲示板などで「協力しようぜ」などと呼びかけた記録が残っていれば、共犯性が推定されうる要因となります。
時効の壁と実際の追及リスク
民事上の損害賠償請求は、不法行為から20年または損害・加害者を知ってから3年で時効(消滅時効)となります(民法724条)。つまり、行為から20年以上経過していれば、理論上は請求権が消滅している可能性が高いです。
一方、名誉毀損などの刑事事件では、親告罪であることから告訴がなければ起訴は困難です。また、名誉毀損罪の公訴時効は3年(刑事訴訟法250条)であり、今回のような古いケースではすでに時効が成立していると考えられます。
インターネットと共犯性|軽いノリでも罪に問われる?
「ねらーと協力して」という表現から読み取れるように、匿名掲示板などでの集団行為はしばしば法的リスクを過小評価しがちです。しかし、過去には実際に2ちゃんねるなどで私刑目的の晒し行為を行ったユーザーが、侮辱罪や名誉毀損で起訴・民事訴訟を受けたケースもあります。
違法性があるかどうかは「動機」や「相手の性質」ではなく、結果として相手の社会的評価や権利が侵害されたかによって判断されます。
まとめ|「昔のネットの悪ノリ」でも法的責任は問われ得る
たとえ20年以上前の話であっても、電話番号を晒す行為は名誉毀損・プライバシー権侵害として法的に問題がある可能性が高く、悪質性によっては刑事・民事の責任が問われた可能性もあります。
時効によって法的リスクは現実的には消滅していることが多いとはいえ、今後似たような行為を繰り返せば当然、現行法で裁かれる可能性があります。過去の行動を省みて、ネットリテラシーを高めることが今後のトラブル回避にもつながります。