満員電車での転倒で他人に怪我をさせたら罪になる?過失傷害罪の成立要件と実際の判断基準

満員電車で吊り革につかまれず、転倒して他人の足を踏んでしまい、その結果ケガをさせた場合、「過失傷害罪」になるのか?と不安に感じたことがある方もいるでしょう。本記事では刑法上の「過失傷害罪」の成立要件や、公共交通機関における事故時の法的な考え方を解説します。

そもそも過失傷害罪とは?

刑法第209条では「過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金若しくは科料又は拘留に処する」と定められています。

ここでいう「過失」とは、注意義務を怠ったことにより、予見可能な結果を招いた場合を指します。

つまり、注意を払っていれば防げたのに、適切な配慮を欠いたことで相手に怪我を負わせた場合に、過失傷害罪が成立する可能性があるのです。

満員電車のような特殊な環境での判断基準

満員電車は極めて不安定で、身動きがとりづらい環境です。吊り革がつかめない状況や、他人との接触が避けられない構造においては、日常生活の延長として許容されるリスクと評価される傾向があります。

そのため、よほどの不注意や突飛な行動でない限り、「不可抗力」として扱われ、刑事責任を問われる可能性は非常に低いです。

実際に問われるケースとはどんな場合か

例えば、次のようなケースでは過失傷害罪が問題になる可能性があります。

  • 酒に酔ってふらついた末に他人を転倒させた
  • 満員にもかかわらず、スマートフォンを見ながら片手で立ち続け転倒した
  • 車内で大声を出して周囲を驚かせ、将棋倒しの原因になった

これらは「通常の注意義務を怠った」状態とみなされる可能性があるため、過失が認定されるリスクがあります。

民事上の損害賠償は別の観点

仮に刑事責任(過失傷害罪)が問われなくても、相手方が損害(治療費・通院交通費など)を被った場合、民事上の損害賠償義務を問われる可能性はあります。

この場合は「不法行為責任」(民法709条)に基づいて判断され、加害者の故意・過失の程度、被害者の過失割合などを考慮して、損害額の一部または全部を負担することになります。

謝罪・誠意ある対応が重要

被害者に怪我をさせてしまった場合、まずは丁寧な謝罪と連絡先の交換を行いましょう。重大な事案でなければ、その場で和解が成立することも少なくありません。

また、誠意ある姿勢が相手の感情を和らげ、民事・刑事のいずれの責任も回避・軽減できる可能性があります。

まとめ

✅ 満員電車で吊り革をつかめずに他人を踏み怪我をさせた場合でも、通常は不可抗力として刑事責任(過失傷害罪)に問われる可能性は低いです。

✅ ただし、泥酔・スマホ操作・片手持ちなど明らかな注意欠如があれば、過失が認定される場合があります。

✅ 刑事とは別に、民事上の損害賠償責任が問われることもあるため、事故後の誠実な対応が最も重要です。

安心して公共交通機関を利用するためにも、自身の安全と周囲への配慮を心がけましょう。

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